韓国人の読解力低下、根本的な問題は漢字力?

朝鮮日報によると

韓国の気候の特性について教える中学校のある教師(地理)が、黒板に「セマウル運動前までは多くの田んぼが『チョンスダプ』であり、雨が降らなければ農作業ができなかった」と書いた。生徒たちは文章を理解できなかった。「チョンスダプ」という聞き慣れない単語のためだ。そこで教師が「天水畓」と漢字で書き、「空から雨が降ってこそ農作業ができる田んぼという意味」と説明すると、ようやく生徒たちがうなずいた。教師は「漢字で教えることで理解が深まる」と口をそろえる。

 韓国教員団体総連合会が今年、ハングルの日を迎えて実施した調査でも、漢字能力と読解力の相関関係が改めて指摘された。高校3年生が「風力」の意味を、中学3年生が「首都」の意味をそれぞれ分からず、教科書を理解できないという。「本気で言っているの?」と問い返したくなるような質問もたびたび飛んでくる。「カロドゥン(街路灯、カロは『横』の意)はセロ(縦)に立っているのに、なぜカロドゥンと言うのか」、「デチュンドル(大衝突、デチュンは『適当に』の意、ドルは『石』の意)は『適当に作った石』ではないのか」と聞いてくる。「マギョク(莫逆、『きわめて親密な間柄』の意)の仲」と言うと「漠然とした間柄」を書き間違えたものと勘違いする。

 こうした語彙(ごい)力で文章をしっかりと理解できるはずがない。授業の進行に支障を来すくらいだという。今回のアンケートで一線の教師の92%が「生徒たちの読解力が以前よりも劣っている」と回答した。生徒の5人に1人は、他人の助けなしに教科書を理解できないほどだという。教師は試験問題を出しながら、「子どもたちに解ける問題かどうかを心配する前に、質問の内容が理解できるかどうかを心配しなければならない」と内情に触れた。

 ただ、青年世代の読解力そのものが低いと断言するのは早すぎるといった見方もある。今の青少年と20-30代は幼い頃から外国語に、母国語に負けずとも劣らないくらいに接して育った国際化世代だ。聖書を読みながら漢字語に出くわすと、親の世代は辞書を引いたものだが、最近の若者はインターネットで英語の文章を検索し、正確な意味を把握する。「異性との交際」と言うと聞き取れず「デート」と言うと理解する。文章を読んでも理解できないのは、韓国語の70%が「漢字語」で構成されているためだ。結局、読解力の根本的な原因は漢字に対する理解力にある。

 教師たちは読解力を高めるためにデジタル機器を遠ざけ、語彙力を増やし、本をたくさん読むよう勧める。特に、高次元の思考と関連した抽象的な概念語は、漢字を知らずに理解することはできない。英語圏の国々が学生たちにラテン語を教えるのも同じ脈略からだ。言語哲学者である延世大学のイ・ギュホ元教授は著書『言葉の力』で「単語を知っているということは世界を知っているということ」と書いた。たくさんの単語を知っているほど、認識の幅も広がるという意味だ。漢字を身に付け、語彙を増やしてこそ、より広い世界に進み行くことができる。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

以下X(旧Twitter)より

【jnnaviさんの投稿

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みんなのコメント

編集部Aの見解

韓国の教育現場で、生徒たちが漢字の理解力不足に苦労している現状が報じられたことは、日本の教育にも通じる課題として非常に興味深いです。韓国語の70%が漢字語で構成されているという事実を考えると、漢字の知識が欠けることで読解力の低下が起きるのは自然な流れかもしれません。教師たちが「天水畓(チョンスダプ)」という言葉の意味を漢字で説明しなければ理解が進まないという実例は、言葉の力の重要性を強く感じさせます。

現代の若者が読解力に欠ける背景には、情報のデジタル化が影響している面もあるでしょう。インターネットで調べることができるため、昔のように辞書を引いて言葉の意味を探る機会が減っているのかもしれません。実際、韓国の調査でも、生徒たちの多くが教科書を理解するのに苦労していると指摘されています。これは教育全体の質にも影響を与えかねない深刻な問題です。

特に、高次元の思考を必要とする抽象的な概念語の理解には、漢字の知識が欠かせないと考えます。英語圏の国々が学生にラテン語を教えるのも、言葉の理解が思考の幅を広げるからこそでしょう。単語を知ることが世界を知ることにつながるという考え方には、非常に共感します。語彙が豊かであるほど、人はさまざまな視点から物事を捉えることができるのです。

しかし、若者たちが韓国語よりも外国語に親しんでいるという指摘もまた興味深いです。「異性との交際」という言葉が理解されず、「デート」と言い換えれば伝わるというエピソードは、言語の国際化が進む中での現代社会の一端を示していると感じます。これは、国際化と伝統文化のバランスをどう保つかという課題にもつながります。

漢字教育を復活させることが読解力の向上につながるとする意見には賛成です。しかし、それだけでなく、読書の推奨やデジタル機器の使い方の見直しも重要だと思います。言葉を通じて世界を広げるためには、一つのアプローチだけでなく、総合的な教育方針が求められるからです。

教師たちが漢字の力を通じて語彙力を高めようとする努力は、将来の学力向上にとって非常に大切な取り組みです。教育が単なる知識の習得にとどまらず、思考の幅を広げ、深い理解力を育むものとして機能することを願っています。こうした取り組みが実を結ぶことで、若者たちはより自信を持って社会に出ていけるでしょう。

結局のところ、言葉は単なるコミュニケーション手段以上の力を持っています。言葉を理解する力が強ければ、他者との対話も深まり、社会の一員としての役割も果たしやすくなります。韓国だけでなく、日本でも同様の問題が存在することを考えると、今こそ言葉の教育に力を入れるべき時ではないでしょうか。

このような教育の改善が進めば、漢字や言葉の力を通じて若者たちの未来がさらに広がっていくことを期待しています。

執筆:編集部A

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