埼玉県川口市とその周辺のクルド人らが、夜の巡回と清掃に力を入れている。交流サイト(SNS)でクルド人を非難する書き込みが増え、住民との間でトラブルも発生したことを受け、日本の生活ルールを広め、地域で共生するのが狙い。背景には、強制送還を容易にする来年の改正入管難民法施行への危機感もある。
クルド人 「国を持たない最大の民族」と呼ばれ、トルコ、イラク、シリアなどにまたがって居住している。トルコでは弾圧が激しく、多くの人が難民として逃れており、国連によると2011年から10年間で世界各国で約5万人のクルド人が難民認定された。日本でも埼玉県川口市や蕨(わらび)市に多く住んでいるが、国内で難民認定された例は北海道での1人にとどまる。
◆「話せば分かる」歩いて声かけ
肉を焼く香りが漂う、JR蕨駅(蕨市)に近いケバブ料理店。夜8時、店の前に男女15人が集まった。解体や建設などの仕事帰りのクルド人や中学生、日本人の姿も。リーダーはクルド人団体「日本クルド文化協会」代表理事のシカン・ワッカスさん(32)。商店街を歩いて回り、ごみを拾うと、車に分乗してコンビニなど二十数カ所を2時間かけて回る。
コンビニの前で、クルド人男性3人が缶チューハイを飲みながらトルコ語で談笑していた。「長くいるとみんなが嫌がるよ」。ワッカスさんが告げると、男性らは立ち去った。「話せば分かってくれる。自分たちへの目が厳しくなる恐れをみんな感じているから」
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コンビニの店長に近況を聞く日本クルド文化協会のワッカスさん(中)=埼玉県川口市で
巡回は9月から週1回。以前も定期的に回っていたが、新型コロナウイルス禍で中断した。だが、今夏ごろからSNSで「クルド人が過積載の車で走っている」などと批判が増えた。7月には川口市内でクルド人が別のクルド人を刃物で切りつけ、病院に仲間ら100人が集まる騒ぎがあり、非難が増幅した。
「イメージ悪化を防ぐためにも、日本の生活ルールを知らせる必要がある」。ワッカスさんらは共生を図り、巡回を再開した。協会には市民から「間違った日にごみを出している」などの苦情が寄せられ、巡回でチェック。日本の交通ルールをトルコ語で解説するパンフレットも配る。
独自の文化を持つクルド人は主要居住地のトルコで弾圧され、難民として各国に身を寄せる。日本でも川口市とその周辺に2000~3000人が暮らす。難民認定基準が厳しい日本では相当数が退去命令を受け、就労できず、健康保険証もない「仮放免」の立場にある。
巡回しながら、ごみ拾いをするクルド人たち=埼玉県のJR蕨駅近くで
地域で非難が強まれば、出入国在留管理庁が強制送還に動きかねない。難民申請3回目以降の人を強制送還対象とする改正入管難民法の施行を来夏に控える。
熱心にごみを拾う女性ヤスミンさん(41)は17年前にトルコから逃れ、夫や子と共に仮放免の身。「この街を私の故郷と思っている。街の人たちと仲良く暮らしたい」と語る。クルド人の知人に誘われて参加した50代の日本人の男性会社員は「彼らと共生できるよう、日本人も知恵を絞る必要がある」と話した。(池尾伸一)
◆「犯罪と無縁の仮放免者は就労を認めて」川口市長
「一定条件の下で働けるようにしてもらいたい」。川口市の奥ノ木信夫市長は本紙の取材で、多くのクルド人が仮放免という不安定な状況に置かれていることを問題視。トラブル回避の点からも、就労の必要性を強調した。
奥ノ木信夫・川口市長
川口市は今年9月、2020年に続いて2度目となる要望書を、法相に提出した。仮放免者について「就労できず不安定な生活を余儀なくされている」「健康保険未加入で適切な医療を受けられない」と指摘し、国の対応を求めた。
奥ノ木市長は「車の暴走や仲間同士の暴力沙汰といった行為を厳しく取り締まり、刑法犯を強制送還するなどしっかり対応するべきだ」とする一方で「外国人を排斥したいわけではない。犯罪と無縁の仮放免者に、一定条件で段階的に就労を認めていく制度を、国に検討してもらいたい」と述べた。(出田阿生)
引用元 https://www.tokyo-np.co.jp/article/291460
みんなのコメント
- 不法滞在の犯罪者は入管法に則って、帰国して頂くのが一番の川口市の夜の安全に繋がるのでは?
- 巡回という名の「物色」だったりして
- その人たちに夜の巡回とかされたら逆に怖いでしょう?
- こういう一時凌ぎの善人仕草で煙にまこうとするんですよね
- クルド人と中国人入れんかったらパトロールすら必要無かったんではないか?
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