死刑廃止を求める日本弁護士連合会の呼びかけで、民間の識者らによる「日本の死刑制度について考える懇話会」が発足した。
委員には平沢勝栄衆院議員や林真琴前検事総長、金高雅仁元警察庁長官らが名を連ね、日弁連が事務局を務める。今秋にも提言をまとめて政府に働きかける方針だ。
懇話会は設立趣意書で「死刑制度の廃止は国際的潮流で、先進国で国として統一して執行を続けているのは日本だけ」としている。議論を廃止に導こうとしている疑いが強い。
続きを読む座長に就任した井田良・中央大大学院教授は、昨年11月の日弁連のシンポジウムで「死刑制度には致命的ともいえる問題点がいくつもある」「応報的な刑罰論から脱却すべきだ」と発言している。
日本は死刑制度を有する法治国家である。裁判員裁判でも厳刑相当の事件には死刑判決が出されており、制度は社会に定着している。なぜ、今提言を出す必要があるのか。
死刑のない英国やフランスなどでは、容疑者を警察官が事件現場で射殺する「即決の処刑」と呼ばれる事態が頻発する。加害者の裁判を受ける権利を奪う措置であり、真相の究明もなされない。
刑罰は、国民の道徳観、死生観、宗教観と深く結びついている。外国にならえばよいというものではない。
内閣府が、全国の18歳以上の男女を対象に令和元年に行った世論調査では、死刑制度の存続を支持する人は80・8%で、「廃止すべきだ」と回答した人は9%だった。制度存続を支持する人が、廃止すべきだとする人を大きく上回る傾向は、昭和31年の調査(当時は総理府)から変わらない。
廃止派は、「死刑は『国家による殺人』で残虐だ」と非難するが、死刑判断を導く要因となった凄惨(せいさん)な犯罪は残虐ではないのか。京都アニメーションの放火殺人事件では、36人が命を奪われた。厳刑をもってしか償うことができない重い罪が、この世には存在する。
死刑制度の維持は、非道な犯罪を国、社会、国民は許さないという決意といえる。被害者や遺族の強い処罰感情に応えることは司法の役割でもある。重視されるべきは、海外の潮流でなくこうした価値観である。
引用元 https://www.sankei.com/article/20240331-4NYPZT7EZ5M4JFO4ES6R5AQP4Q/