複数の女性への性的暴行疑惑(のちに不起訴)と覚せい剤の使用により、韓国での活動ができなくなった元東方神起のユチョンは2月、日本でファンミーティングとディナーショーを行った。「バーニングサン事件」で韓国中を騒がせたFTISLAND出身のチェ・ジョンフンは日本で有料ファンサイトを開設し、復帰を試みている。韓国では、「日本が不祥事を起こした“元韓流スター”の逃避先になっている」という非難も出ている。
このニュースが韓国に伝わると、韓国のK-POPファンから非難が殺到した。ユチョンは2月9日から11日の3日間、東京と横浜でデビュー20周年を記念するファンミーティングとディナーショーを行った。チケット価格はファンミーティングが2万3000円、ディナーショーは5万円。相場より2~3倍高いという。
「いまだに好きってことは本当の愛だね。(ユチョンは)日本に住み着いて韓国には戻って来ないでほしい」
「日本のファンは一度好きになったら何をやらかしても許すのか? 不思議だ」
「ミナサン、しっかりしてくださいよ」 (※ミナサンとは、韓国の芸能人が日本人ファンを「みなさん」と呼ぶことから派生した、日本人ファンを指して使われる言葉)
アジア各国で人気を誇っていたユチョン
2004年に5人組のボーイズグループの「東方神起」のメンバーとしてデビューを果たしたユチョンは、主演を務めたドラマ『トキメキ☆成均館(ソンギュンガン)スキャンダル』の大ヒットで、日本をはじめアジアでも大きな人気を博した。特に韓国では、ユチョンの人気が他の東方神起メンバーを圧倒していた。
2008年には紅白歌合戦に出場するなど日本でも人気を博した「東方神起」。(左から)ジュンス、ユチョン、ジェジュン、チャンミン、ユンホ。現在はチャンミンとユンホの2人で活動中(「Beautiful you」ジャケット写真より)
2009年にメンバーのジェジュン、ジュンス、ユチョンがグループを脱退。所属していた大手芸能事務所のSMエンターテインメントを退所し、JYJというボーイズグループを結成した。しかし、韓国の芸能界において絶対的な影響力を持つSMに押されて、JYJは一時期音楽番組への出演ができなかった。
ユチョンはこの時期に役者へと活動の幅を広げ、甘いマスクと演技力で韓流スターとして認められることに成功。ファン層を拡大した。
トイレでの“性的暴行疑惑”は不起訴となったものの…
俳優業が軌道に乗り、爆発的な人気を手にしたユチョンだったが、社会服務要員(※軍入隊の代わりに公共機関に勤めることで兵役を履行すること)として勤めていた2016年6月、ソウル・江南カンナム の遊興業店(※女性従業員が付き添う店のこと)の女性従業員など4人から性的暴行で告訴を受けることになり、キャリアが崩れる。
結論から言えば、この4件の告訴は全て「証拠不十分」で不起訴となったが、軍人という身分で遊興業店に出入りしたという事実だけでも、韓流ドラマへの出演を通してつくりあげた「ピュアで善良なイメージ」に大きな傷を負わせた。
しかも4人の告訴人が性的暴行を受けたと話した場所がすべて「トイレ」だったという点で、「韓流プリンス」としてのユチョンのイメージは回復できないほどに壊れた。
一方でこの頃、韓国の大手乳製品メーカー・南陽乳業の創業者の孫娘であるファン・ハナ氏が自分のSNSに「ユチョンと婚約した」と明かしたことも話題になっていた。そして2019年に衝撃的な事件が起きる。
ユチョンとファン氏は2018年ごろに破局したと知られていたが、ファン氏が2019年4月に覚せい剤を使用した疑いで逮捕されると、警察の取り調べでユチョンの名前を口に出した。
「2015年以降、薬物をやめようとしたが、芸能人のA氏に勧められた。私が寝ている時にA氏に無理やり飲ませられた」
ファン氏がそう供述したという報道が出ると、メディアと大衆は「A氏とは、元婚約者のユチョンに違いない」とほぼ断定的に伝え、“ユチョンの薬物使用疑惑”は韓国中に広がった。
薬物使用の疑惑について会見を開いた
こうした疑惑についてユチョンは記者会見を開き、涙を流しながら潔白を主張した。彼は「活動を再開するために毎日努力している。そんな私がすべての努力を水の泡にするようなことをするわけがない。決して薬物を使ったことがない」と訴えた。
記者会見の後、ユチョンは自ら警察に出頭して検査を受けた。ところが、ユチョンの脚の毛から薬物の陽性反応が出て、涙の記者会見が嘘だったことが明らかになった。 その後、麻薬類管理に関する法律違反の罪で起訴されると、ユチョンは一転して立場を変え、「嘘をついて申し訳ない。深く反省しながら生きていく」と頭を下げた。裁判では初犯という点と反省の姿勢が認められ、執行猶予を受けて釈放された。
「再び傷つけられた」とファンからも見放される
この薬物事件でユチョンは韓国の芸能界から完全に追放された。所属事務所のC-Jesエンターテインメントは「契約解除」を宣言。韓国のファンクラブは「(記者会見での)彼の切実な訴えを信じて『支持声明』を発表したが、結局ファンの心を再び傷つけた。これ以上彼を応援できない事態にまで至った」とし、「芸能界引退を要求する声明」を発表した。
ユチョンのファンクラブの寄付でつくられた仁川インチョン 市の「パク・ユチョン桜道」がファンクラブの決断で撤去されるなど、韓国の大衆はユチョンから完全に背を向けた。しかし、この時も、日本のファンクラブは「ユチョンを支持する」という声明を発表。韓国メディアからは「歪んだファン心理だ」という非難を受けた。
この後、ユチョンは活動の舞台をタイや日本などに移し、ささやかに活動を続けているが、なおも新しい議論が起きている。
税金の未払いも指摘される
2021年には、新たな所属事務所から「専属契約規定に違反して日本企業と二重契約を締結した」として告訴され、1審で5億ウォン(※日本円で約5600万円)の賠償を命じられた。2023年には韓国の国税庁が高額常習滞納者のリストを発表したが、ユチョンは2016年から約4億ウォンの税金を納付していなかったとしてリスト入りした。
このように常に問題が絶えないユチョンが日本で高額なファンミーティングを行ったということに、韓国の大衆が憤るのは当然だろう。
横浜のディナーショーは参加費5万円(「ユチョン20周年記念アニバーサリーイベント」サイトより)
韓国を震撼させた「バーニングサン事件」に関与した人物も…
さらに、過去に社会的に物議をかもし、日本で芸能活動への復帰を試みる“元韓流スター”はユチョンだけではない。
現在は3人で活動中のロックバンドFTISLANDの元メンバーのチェ・ジョンフンは韓国中を騒がせた「バーニングサン事件」に関わったとして、2019年にグループを脱退、芸能界の引退を表明していた。しかし最近、日本のファンコミュニティサイトの「ファニコン(Fanicon)」に自分のチャンネルを開設し、活動復帰を試みている。
「バーニングサン事件」とは、2018年に「江南の高級クラブ・バーニングサンで女性に対する性的暴行や薬物使用などの違法行為が行われている」との情報提供で捜査が始まった事件だが、このバーニングサンの代表が大人気グループBIGBANGのV.Iだった。V.Iには2021年8月に売春、売春斡旋、横領、食品安全法違反、常習賭博、外為法違反など9件の罪状で懲役3年の実刑判決が下った。
ジョンフンはソロ歌手のチョン・ジュニョンなどと共に睡眠剤を飲ませた女性らを盗撮した違法動画をグループチャットで共有した疑惑で捜査を受けた。この捜査によって、チョン・ジュニョンの女性ファンに集団性的暴行をして、その映像をグループチャットにアップしたことが発覚した。
ジョンフンは集団性的暴行などの疑惑で懲役2年6ヶ月の実刑判決を受け、2021年11月に満期出所した。そんな彼が今年1月、日本で有料ファンサイトを開設し、活動再開を試みるというニュースは、やはり激しい非難を浴びている。
度重なる不祥事でも…「ぼくを信じてほしい」と訴えた
さらに、男性デュオの「UN」のメンバーで、ドラマ『宮 -Love in Palace-』を通じて日本でも大きな人気を集めたキム・ジョンフンも、2011年に飲酒運転で摘発、元交際相手から「妊娠中絶を強要された」と訴えられるスキャンダルによって韓国での活動を中止したが、2021年から日本で活動を続けている。
その上彼は昨年末には接触事故を起こし、現場で飲酒測定を拒否して再び検察に送致された。しかし、今年1月に大阪で開かれたファンミーティングで日本のファンに向かって「ぼくを信じてほしい」と訴えていたという。
5月にも東京・銀座でのコンサートを予定しているキム・ジョンフン(キム・ジョンフン公式サイトより)
情報が日本にきちんと伝わっていない
不祥事を起こした韓流スターたちが日本を活動復帰の場に選ぶ理由について、韓国の芸能記者は匿名を条件に次のように説明した。
「韓国の大衆は芸能人に対して非常に厳しい基準を持っている。道徳的な部分に対しても、むしろ政治家よりも芸能人を厳しく非難する。一方で、日本のファンは芸能人の道徳的な部分には多少目をつぶる傾向があるのではないか。
言語の壁もあり、韓国で起きた不祥事に関する情報がきちんと日本に伝わらないことにも原因があるだろう。自分の好きなスターが目の前で、『ぼくは悔しい、ぼくを信じて!』と言うと、真相をよく知らない日本のファンが信じないわけにはいかないだろう」
韓国では、犯罪まみれの不祥事で引退を宣言した元韓流スターたちが、引退を覆して海外で復帰するという行為が、海外での韓流ブームにも水を差しているという批判が出ている。純真な海外ファンを金儲けに利用する彼らの行動は、批判に値する不分別なものだろう。
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