長年住み込みで働いていた牧場(北海道恵庭市)で虐待されていたとして、知的障害のある男性3人が、牧場の経営者家族と市に損害賠償計約9400万円の支払いを求めた訴訟の第1回弁論が28日、札幌地裁(布施雄士裁判長)であった。被告である経営者家族と市側は「虐待の事実は認識していない」として請求棄却を求めるなどした。
訴状によると、3人はいずれも60代の男性で、同市の「遠藤牧場」で18~45年間、住み込みで働いていた。原則休みはなく、午前3時半ごろに起床し、明け方から日没ごろまで牛の乳搾りや農作業などの仕事をしていたが、賃金は支払われていなかったとしている。
3人が障害年金を受け取っていた銀行口座からは、2003年以降で計5千万円超が引き出されていたが、それらのお金を3人が受け取ることはなかった。口座は経営者らが管理していたという。
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3人は牧場内のプレハブ小屋の個室で生活していた。小屋に水道はなく、暖房は1部屋にしかなかったとしている。朝食は、ご飯にお湯と生卵をかけたものを支給されていた。昼夕食はレトルトカレーなどで、原告の弁護団は「かなり質素なもの」だったとする。
訴状では、市の責任についても言及した。
市は2017年1月の時点で、3人の生活状況を把握していたと指摘し、「虐待の疑いを強く認識しながら、経営者が元市議会議長だったことからあえて調査を行わず、放置した」と主張した。
この日の弁論では、原告弁護団の船山暁子弁護士が意見陳述し、「(3人は)与えられた環境に疑問をもつことができず、逃げ出すことも、助けを求めることもできなかった」と主張した。そのうえで、「原告たちは、知的障害者である前に私たちと同じ、人権をもつ一人の人間だ。『健常者』に対して許されないことが、障害者相手であれば許されるということはありえない」と訴えた。
一方、経営者家族は、「認識している事実と異なる点がある」などとした。
市は「虐待の事実を認識しておらず、隠蔽(いんぺい)も放置もしていない」と反論。経営者が元市議会議長であったからといって「忖度(そんたく)するような動機、必要性はそもそもない」などとした。
また、市は、経営者の夫婦らは原告3人の「里親」だと主張。原告3人は「『家事使用人』と表するのが妥当」であり、「労働契約が成立した『労働者』だとするのは誤りだ」とした。
原告弁護団の中島哲弁護士は、「障害者虐待防止法によると、雇用主らによる『使用者虐待』よりも、親などによる『養護者虐待』の方が、市町村の権限や義務がより重い」と指摘している。
引用元 https://www.asahi.com/articles/ASRCX3C8WRCWIIPE00N.html?iref=pc_photo_gallery_bottom
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