ユニセフのキティ・ファン・デル・ハイデン事務局次長は、「世界中の子どもも半数が気候変動がもたらす極めて大きなリスクのもとで生活している」と語った。
日本ユニセフ協会とユニセフ東京事務所は6月20日、ユニセフ気候変動フォーラム「気候変動は子どもたちの危機」を開催した。
フォーラムに登壇したユニセフのキティ・ファン・デル・ハイデン事務局次長は「気候変動によって子どもの死亡率、そして病気が急激に増えています」と警鐘を鳴らした。
「今日、10億人の子どもたちが、気候変動がもたらす極めて大きなリスクのもとで苦しい生活を強いられています。これは世界中の子どもたちの半分を占める数です」
今すでに子どもたちに起きている気候変動の影響とは?それを知った子どもたちが目指したい未来とは?
子どもに一生影響が残る健康被害も
ファン・デル・ハイデン事務局次長は基調講演の中で、気候変動による子どもたちへの影響をいくつか説明した。
「子どもたちは生まれる以前から非常に脆弱な存在です。気候変動がもたらす熱波によって、早産する子どもたち、低体重で生まれてくる子どもたちが非常に増えています。さらに干ばつや熱波によって、母乳の量や質も変化しつつあります」
また、赤ちゃんが成人よりも2倍のスピードで呼吸することに触れ、「例えば大気が汚染されていたり、山火事による様々な毒素を含んだ空気を吸ってしまったりした場合、肺の成長に影響があり、寿命が縮まってしまうということが起きています」と述べた。
他にも、子どもは非常に暑い時に大人のように上手く体を冷やせず、猛暑で腎臓機能障害を引き起こす可能性や、干ばつなどによって子どもが生まれてから最初の5年間で十分な栄養が取れないと、認識能力や発達に影響がでて、一生その影響を被る可能性もあるという。
「気候変動が子どもたちに及ぼす悪影響は明日のことではなく、今まさに起こっていることなのです。子どもたちの肺や脳、心臓、そしてその子どもたちの人生一生に悪影響を及ぼしてしまう。今こそ我々は行動をとらなければなりません」
ユニセフは世界中の子どもたちのために、▽各国が高い目標を掲げ、世界の平均気温上昇を1.5度に留めること▽子どもたちに必要となる教育、健康、栄養など様々な社会的ニーズを満たしていくこと▽議論の中に若い人たちが参画できるように力を付与することの3つを呼びかけているという。
アグネス・チャンさんが語った、気候危機「最先端の国」
ユニセフ・アジア親善大使のアグネス・チャンさんが登壇。地球温暖化や気候変動の影響を最も受ける国の一つと言われる、太平洋中部に位置するキリバス共和国の現状について報告した。
キリバスは33のサンゴ礁からできた島で成り立っている。アグネスさんによると、首都があるタワラ島の幅は狭いところで25メートル、海抜は最高3メートルしかないという。
キリバスが受ける気候変動による大きな影響の一つが海面上昇だ。多くの家が海岸線に建っているが、「高潮の時には海水が家に入ってきます。家が流されてしまった人もいます」とアグネスさんは説明した。
「海面が上昇すると、貴重な地下水に海水が侵入してしまって、飲み水が不足して大変なんです」
少ない地下水でもキリバスがこれまでやってこれたのは、6ヶ月にわたって降る雨があったからだった。しかし、「気候変動がまた悪さをするんです」とアグネスさん。
「2019年と2023年に干ばつが起きてしまったんです。干ばつが起きてしまうと、さらに地下水が減り、海水が侵入し、雨水が貯められない。キリバスのお年寄りの方は、『このまま干ばつが繰り返されれば、子どもたちの未来がない』と言っていました」
そんな気候変動の影響を大きく受けるキリバスの温室効果ガス排出量は世界全体の0.0002%だという。アグネスさんは「理不尽ですよね」と語った。
「一人の子に、キリバスで1番いいところはなんですかと聞いたら、『コミュニティ』と言ったんです。みんなが家族のように一緒にいるのが1番いいんだと。そう言いながら『環境問題を勉強すればするほどこの国が本当にうまくいくかどうか分からない。親になれる希望がないかもしれない』と言うんです。本当に胸が痛かった」
アグネスさんは日本の土地にも海抜が低いところがあるとした上で、「今日はキリバス、明日は私達です。みんなの問題です。みんなで解決しましょう」と訴えた。
気候変動問題の一部になるのか、解決策の一部になるのか
フォーラムのトークセッションには、慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授、LIXILの小林智常務役員や、NHK Eテレ「あおきいろ」子どもSDGsユニット「ミドリーズ」の3人らも登壇した。
ミドリーズのあやとさんはファン・デル・ハイデン事務局次長やアグネスさんの話を聞いて、「温暖化がすごい進んだりとかそういうのもちょっと怖いし、本当に誰が何をしなければいけないのかなと思いました」と話した。
LIXILの小林さんは「企業の使命はただの良い商品を作ってお客様にお届けするということだけではなく、環境や社会課題への配慮を前提にどうやってものを作るか、近年真剣に考えるようになりました」と語った。
例えば窓の性能を上げて、暖房で温まった部屋の空気をできるだけ部屋の中にとどめ、効率的に電力を使うなどの「緩和」、太陽光を住宅に上手く取り入れる、または夏の暑い日射を上手く遮る商品など、太陽光と共存しようとする「適応」を並行して進めることが重要だという。
また、ユニセフと連携して行った「住まいから未来へつなぐプロジェクト」を紹介。高断熱窓や日射遮蔽シリーズなど対象商品の売り上げの一部を、自然災害の緊急支援や気候変動対策支援のためにユニセフに寄付する仕組みだ。2023年は3カ月で2000万円を寄付したという。
引用元 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6678dce5e4b03378e8dcac24
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