【中央大教授・山田昌弘氏】失敗した少子化対策の果て 日本は「幸福」に衰退していく

Spread the love

産経新聞によると…

選択次第であり得たかもしれない、この現実とは異なるもう一つの現実。それは今、「世界線」と呼ばれるようになった。産経新聞ではこの言葉を手がかりとして、時代を象徴する5つのキーワード(インターネット、コンプライアンス、豊かさ、結婚、戦争)を考察する連載を展開してきた。より善(よ)き未来へと通じる「世界線の歩き方」とは、どんなものだろうか。最前線で思索する識者とともに、今一度考えてみたい。

「都市部のキャリア女性」想定の対策

《平成後期から人口減少が始まっている。少子化が一因だが、なぜ、改善できないままここまできてしまったのか》

政府の少子化対策がうまくいかなかった、という側面があるのは否めない。

保育園を増やしたり、女性管理職の割合に数値目標を設けたりと、女性の社会進出を促す施策は、少子化対策の柱となってきた。それは、大都市で大企業の正社員や公務員として働く女性が、キャリアアップを重ねながら子供を産み育てられるモデルを想定していたといえる。

確かに、子供の数が全国で減り続ける中、東京23区では減少幅が抑制されてきた。部分的には効果があったことはうかがえる。

ただ、女性の大学進学率が5割を超えたのは平成30年以降だ。令和6年度は56%まで伸びているものの、このうち、どれほどの数の女性が大企業の正社員や公務員となり、管理職を目指しているのだろうか。

非・大卒で地方在住、中小企業勤務、非正規雇用といった女性は数多い。政府が打った政策の「ターゲット」がずれていた、と指摘せざるを得ない。

「欧米モデル」を持ち込んだ誤り

《なぜ、少子化政策を見誤ったのか》

政策立案者である官僚も、それを報じるメディアの記者も、その身近にいるのは「大都市に居住する大卒キャリア女性」だ。視野の広がりに欠けた可能性はある。

日本社会の特徴を踏まえず、少子化対策に成功した「欧米モデル」の政策を取り入れたことも問題だった。

欧米では、結婚はロマンチックな恋愛の結果生じるもの、という認識があるが、日本では、経済的に新しい生活を始める(節目)という意識で捉えられがちだ。世間体意識も強く、他人から見て恥ずかしくない結婚生活を求める。

とりわけ、子供に経済的につらい思いをさせたくないと考える。そのため日本では、自分が育った経済環境以上の条件が整わなければ、結婚や出産に踏み切らない傾向が強い。

「少しずつ貧しく」

《今年1月に刊行した「希望格差社会、それから 幸福に衰退する国の20年」(東洋経済新報社)では、「衰退」がキーワードになっている》

日本社会は、世界の中で経済的に衰退していくだろう。例えば、年金保険料が徐々に引き上げられているように、生活水準が少しずつ低下していく。この「少しずつ」というのがポイントだ。

多くの国民は、それを仕方がないものとして受け入れていく。みんな一緒に少しずつ、貧しくなるのであれば、多くの人は不満を持たない。

制度を抜本的に改革するとなると、必ずリスク、痛みが伴う。政府は国民から文句を言われるリスクを避けたいし、国民は今の生活を失うリスクを避けたい。そうした思いが、これまでの停滞をつくり出し、これからのゆるやかな衰退を予想させる。

この流れが変わるとすれば、幕末の黒船来航によって時代が大きく動いたように、何らかの外圧に頼るしかないのかもしれない。衰退していく日本を見るのは寂しいが、その行く末を注視している。

[全文は引用元へ…]

以下,Xより

【中央大学広報室さんの投稿】

引用元 https://www.sankei.com/article/20250221-YUSBVIDLZFL6LIHFCGZAPPZZSE/

みんなのコメント

  • 少子化対策が失敗したのは、結局のところ政府が現実を見ずに机上の空論で政策を進めたからだ。大都市のキャリア女性ばかりに目を向けて、地方や非正規雇用の女性を無視した時点で結果は見えていた。
  • 欧米のモデルをそのまま持ち込んでも、日本の文化や社会に合わなければ意味がない。結婚や出産の価値観が違うのに、外国のやり方を真似ても成功するわけがない。
  • 少しずつ貧しくなっていくことを受け入れるなんて、日本はどこまで後ろ向きなのか。抜本的な改革が必要なのに、誰もリスクを取ろうとしないのが最大の問題だ。
  • 年金や社会保障費が増え続け、若い世代の負担がどんどん重くなっている。これで結婚して子供を産めと言われても、生活が成り立たなければ無理なのは当然だ。
  • 政治家は少子化を本気で解決する気があるのか疑問に思う。ただ予算をばら撒くだけで、本当に必要な支援ができていない。今のままでは人口減少は止まらない。
  • そもそも、日本は結婚するだけでもハードルが高すぎる。住居費や教育費の負担が大きく、子供を育てる余裕がない家庭が増えているのに、なぜそこにメスを入れないのか。
  • 日本の経済が停滞している限り、少子化は絶対に解決しない。若者が安心して働ける環境を整えなければ、どれだけ制度を作っても意味がない。
  • 女性の社会進出は大切だが、それと少子化対策を混同してはいけない。出産や子育てをしたくても、両立が難しい環境なら結局誰も子供を産まない。
  • 貧しくなることを受け入れるのではなく、どうすれば経済を成長させられるのかを考えるべきだ。今の日本は「仕方ない」で終わらせすぎている。
  • 日本の政治は問題を先送りするばかりで、根本的な解決策を打ち出せていない。現状維持のままでは、ゆるやかに衰退していくのは目に見えている。
  • 日本人は慎重すぎるせいで、抜本的な改革ができない。リスクを恐れるあまり、少しずつ衰退していく道を選んでしまったのではないか。
  • 昔は大家族が当たり前だったのに、今は核家族化が進み、子供を育てる環境が整っていない。家族のあり方を見直すことも、少子化対策には必要だと思う。
  • 生活の質を維持しながら衰退するという考え方は、結局、次の世代に負担を押し付けるだけの話だ。本当にこのままでいいのか、もっと真剣に考えるべきだ。
  • 結婚や出産のハードルを下げるには、まず若者が経済的に自立できる環境を整えることが必要。給料が上がらず、物価だけが上がる国では誰も将来を考えられない。
  • 日本の政治家は、少子化問題を深刻に受け止めているようには見えない。本当に危機感があるなら、もっと大胆な政策を打ち出しているはずだ。
  • 経済が成長しなければ、少子化は絶対に解決しない。日本が豊かになれば、自然と結婚する人も増えるし、子供を育てる余裕も生まれる。
  • 多くの人が「少しずつ貧しくなること」を受け入れてしまっているのが一番の問題かもしれない。現状に甘んじるのではなく、どうすれば発展できるかを考えるべきだ。
  • 「ゆるやかな衰退」なんて言葉で誤魔化しているが、実際は国力が低下し、次の世代が苦しむ未来が待っている。こんな状況を放置していいわけがない。
  • 日本の政治は、危機が目の前に来ないと動かないことが多い。このままだと、手遅れになってからようやく本気で対策を考えるのではないか。
  • 結婚や出産をするのが「贅沢」だと思われるような社会になってしまったのが悲しい。昔は当たり前だったことが、今は難しくなっていることをもっと深刻に考えるべきだ。

japannewsnavi編集部Aの見解

日本の少子化対策は長年の課題とされながらも、結局のところ成功には至らなかった。結果として、日本は経済的にも人口的にも衰退の道を歩んでいる。なぜ、これほどの時間と予算を費やしたにもかかわらず、少子化対策は失敗し続けたのか。

政府の施策が「都市部のキャリア女性」を中心に設計されていたことは、その理由の一つとして挙げられる。保育園の整備や女性管理職の増加を目指した施策は、一部の層には有効だったかもしれない。しかし、日本の女性すべてに当てはまる政策ではなかった。

非大卒、地方在住、中小企業勤務、非正規雇用といった多くの女性にとっては、このような施策はほとんど恩恵がなかったのではないか。つまり、少子化対策のターゲットがずれていたと言わざるを得ない。

欧米モデルを取り入れたことの失敗

少子化対策に関して、日本は欧米のモデルを取り入れたが、これは日本の社会構造や文化と合わない部分が多かった。例えば、欧米では「結婚は個人の選択」という意識が強く、恋愛感情が結婚の主な動機となることが多い。

一方で、日本では結婚は「経済的な節目」として捉えられ、ある程度の安定した収入や社会的信用がなければ、結婚や出産に踏み切れない傾向が強い。つまり、「貧しくても幸せな家庭を築く」という価値観が根付いていないのだ。

経済的な不安が強い社会では、若者は結婚や出産を避ける傾向にある。結婚しても共働きが前提となり、保育園に預けながら子供を育てるスタイルが必要になる。しかし、それが可能なのは都市部で一定の収入がある家庭に限られる。地方や低所得層にとっては、結婚や出産はあまりにもハードルが高くなってしまった。

「少しずつ貧しく」なっていく日本

経済的な衰退が日本社会にどのような影響を与えるのかを考えると、興味深い現象が見えてくる。それは「急激に貧しくなるのではなく、少しずつ貧しくなる」ということだ。

例えば、年金保険料の引き上げや社会保障の負担増加は、日本人の生活に影響を与えている。しかし、その変化は緩やかであり、劇的に生活が崩壊するわけではない。つまり、「ゆっくりとした衰退」であるため、国民の多くは危機感を持たず、「仕方がない」と受け入れてしまう。

政府としても、急激な改革は国民の反発を招くため、大胆な政策を打つことができない。国民は生活の維持を最優先するため、大きな変革を望まない。結果として、日本は現状維持のまま、少しずつ衰退していく道を選んでしまっているのだ。

変革のためには何が必要なのか

日本の少子化対策を根本的に見直すためには、「経済的な不安をなくすこと」が何よりも重要だ。

  • 大企業だけでなく、中小企業や地方にも支援を行うこと
  • 非正規雇用の待遇改善
  • 結婚や出産にかかるコストの削減
  • 住宅取得のハードルを下げる政策
  • 教育費の負担軽減

これらの施策を実行すれば、若い世代が将来への不安を抱えることなく、家庭を持つことができるだろう。しかし、今の政治の流れを見る限り、それが実行される可能性は低い。

外圧による変革の可能性

これまで、日本の歴史を振り返ると、国内の改革は外圧によって起こることが多かった。幕末の黒船来航が日本の近代化を促したように、何かしらの外的要因がなければ、日本は本質的な変革を遂げられない可能性がある。

例えば、少子化が進みすぎた結果、深刻な労働力不足に陥り、日本経済が回らなくなった時、外資が大きく参入することで労働環境が改善される可能性もある。あるいは、日本が経済危機に陥った場合、国際的な圧力によって年金制度や社会保障が大幅に見直されることも考えられる。

幸福な衰退とは何か

「幸福な衰退」という言葉が示すように、日本人の多くは「ゆるやかに貧しくなること」に対して、それほど抵抗を持っていない。

  • 社会の変化を望まない
  • 大きな改革よりも現状維持を選ぶ
  • 今より少しずつ悪くなるなら、受け入れる

こうした価値観が、日本の衰退を加速させているのかもしれない。しかし、それが本当に「幸福」なのだろうか。

将来的に、日本が完全に停滞した社会になり、世界の他の国々が成長し続ける中で取り残されることを、日本人は本当に受け入れるつもりなのか。そうした問いに対して、今の日本社会は真剣に向き合うべき時が来ているのではないかと思う。

まとめ

少子化対策が失敗し続けた理由として、「政策のターゲットがずれていた」「欧米のモデルをそのまま導入した」「経済的な不安を軽視した」ことが挙げられる。

そして、日本は今、「少しずつ貧しくなることを受け入れる社会」へと変わりつつある。これは大きな問題であるにもかかわらず、多くの人は危機感を持たず、ただ現状維持を望んでいる。

しかし、本当にこのままで良いのか。日本の未来を考えた時、今こそ抜本的な改革が必要だ。ゆるやかに衰退していくことを「仕方がない」と受け入れるのではなく、「どうすれば成長できるのか」を真剣に議論すべき時が来ていると強く感じる。

執筆:編集部A

最新記事

コメント

コメントする

CAPTCHA


  • 主要
  • SNS
  • スポーツ
  • 動物
  • 国内
  • 政治
  • 海外
  • 特集
  • 経済
  • 芸能
別サイトの記事も見る
  • 主要
  • SNS
  • スポーツ
  • 動物
  • 国内
  • 政治
  • 海外
  • 特集
  • 経済
  • 芸能
別サイトの記事も見る