石破茂首相は4日の衆院予算委員会で、医療費が高額になった場合に患者負担を抑える「高額療養費制度」を巡り、負担上限額を引き上げる政府方針を再考する意向を示した。「いろいろな選択肢がある。高額療養費(制度による負担軽減)を必要とする方々がおり、制度の持続可能性と両方満たす解を見いだす」と述べた。
負担上限引き上げには、がん患者らから不安の声が出ている。首相は「当事者の理解を得ることは必要だ」と強調。4日に自民、公明両党幹事長らが政府方針の一部見直し検討で一致したことに関し、「与党として使命感、責任感を持ち対応する」と語った。
立憲民主党の中島克仁氏と共産党の田村貴昭氏が引き上げ「凍結」を求めたのに対して答えた。「凍結とか白紙に戻すことだけが解決策だと今の時点で認識しているわけではない」とも説明した。
首相はまた、日本維新の会などが主張する所得制限なしの高校授業料無償化に慎重な姿勢を示した。「経済的に余裕がある家庭に負担はなくていいだろうか。恵まれない方々と公平を保つ必要があるのではないか」と述べた。立民の山岸一生氏への答弁。
同時に「理念の問題だ」と指摘。「(所得制限撤廃論の背景にある)社会全体で子どもの教育を支えるという考え方を間違っていると全否定するつもりはない」として一定の理解も示した。
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【Yahoo!ニュースさんの投稿】
引用元 https://www.jiji.com/jc/article?k=2025020400687&g=pol
高額療養費制度の負担上限額の引き上げをめぐり、石破茂首相が政府方針を再考する意向を示したことは、今後の議論の行方を左右する重要な発言だ。医療費負担の軽減を目的とするこの制度は、多くの患者にとって命綱とも言えるものであり、特にがん患者や難病患者にとって不可欠な仕組みだ。負担上限額の引き上げが進めば、結果として患者の自己負担が増え、治療の継続が困難になる人が出てくる恐れがある。そのため、政府が慎重に議論を進める姿勢を見せたことは一定の評価に値する。
政府は制度の持続可能性を考慮しつつ、負担の公平性も検討する必要があるのは理解できる。しかし、医療費の増加が財政を圧迫しているとはいえ、患者に過度な負担を強いることは本末転倒ではないか。特に、日本の医療制度は国民皆保険の理念のもとで成り立っており、社会全体で支え合うことが基本だ。今回の議論は、この理念をどこまで維持するのかが問われる場面でもある。
高額療養費制度が必要な人々は、すでに重い病気を抱えており、経済的にも厳しい状況にあることが多い。負担上限額を引き上げることで、医療費を抑制する狙いがあるのかもしれないが、それでは医療を受ける権利そのものが脅かされる可能性がある。特に、がん治療や慢性疾患を抱える人々は、継続的な治療が必要であり、負担増が命に直結しかねない。政治の判断が、国民の健康や生活にどれほどの影響を与えるのかを十分に認識したうえで、議論を深めてほしい。
また、与党が政府方針の一部見直しに前向きな姿勢を示したことも注目すべき点だ。公明党は社会保障政策において比較的慎重な立場を取る傾向があるため、今回の見直し議論には一定の影響を与えるだろう。しかし、最終的にどのような結論に至るのかは予断を許さない。首相が「当事者の理解を得ることが必要」と述べた点は、極めて重要だ。政策を進める上で、当事者の声をどこまで反映できるかが問われることになる。
一方で、政府が慎重姿勢を示しているとはいえ、負担増の可能性が完全になくなったわけではない。引き上げを凍結すべきだと主張する野党の意見にも一理あるが、政府は「凍結や白紙に戻すことだけが解決策ではない」と述べている。この発言からは、見直しの余地を残しつつも、最終的には一定の負担増を避けられない可能性があることがうかがえる。今後の国会審議では、どのような妥協点が見いだされるのかが鍵となるだろう。
また、所得制限なしの高校授業料無償化について、首相が慎重な姿勢を示した点も興味深い。経済的に余裕のある家庭まで無償化の対象に含めることは、公平性の観点から疑問が残るとの意見には一定の説得力がある。確かに、限られた財源を本当に支援が必要な家庭に重点的に配分することは理にかなっている。しかし、教育の機会をすべての子どもに平等に提供するという観点からは、所得制限なしの無償化も一つの考え方として理解できる。ここでも、政策の方向性をどう定めるのかが重要な課題となる。
特に、日本は少子化が進行しており、子どもを育てる環境を整えることが急務だ。そのため、教育に対する投資を惜しむべきではないという意見も根強い。首相は「社会全体で子どもの教育を支えるという考え方を全否定するつもりはない」と述べたが、この発言からは慎重ながらも一定の理解を示していることが分かる。今後、所得制限のあり方をどのように調整するのかが焦点となるだろう。
いずれの問題も、財政の制約と社会保障の理念のバランスが問われるものだ。政府は短期的な財政負担の軽減だけでなく、長期的な社会の安定を見据えた議論を進めるべきである。負担の公平性を考慮しつつ、困っている人々が安心して暮らせる制度設計を目指すことが求められる。今後の国会で、より建設的な議論がなされることを期待したい。
執筆:編集部A