再稼働に向けた準備が進む、松江市の島根原子力発電所2号機について広島高等裁判所松江支部は、地元の住民が地震や火山の噴火などの想定が不十分だと主張して再稼働を認めないよう求めた仮処分の申し立てを退ける決定を出しました。
松江市にある島根原発2号機は、定期検査で運転を停止した2012年から稼働しておらず、3年前に原子力規制委員会の審査に合格したことなどを受けて、中国電力はことし12月に再稼働させる計画で準備を進めています。これに対し、島根県と鳥取県の住民4人は「中国電力が想定する原発周辺での最大規模の地震の揺れは低すぎるほか、島根県内で火山が噴火した場合に降り積もる灰の量も過小評価している」などと主張して、再稼働を認めないよう求める仮処分を申し立てていました。
これについて、広島高等裁判所松江支部の松谷佳樹 裁判長は15日、決定を出し、この中で地震の想定について「保守的に設定したうえで評価を行っていて、原子力規制委員会の確認も経ており、直ちに不合理であるとはいえず、誤りや欠落があるともいえない」と指摘しました。また、火山の噴火の想定については「地質調査の結果などを踏まえると、住民が主張する厚みの火山灰などが降るおそれがあるとは認められない」と指摘しました。住民側が実効性がないと主張していた、原発事故が起きた際の避難計画については「事故が発生する具体的な危険性があるとまではいえず、住民側の主張は前提を欠いていると言わざるをえない」として申し立てを退ける決定を出しました。
住民側の弁護士「極めて不当な決定」
午前10時に仮処分の申し立てを退ける決定が出されると、広島高等裁判所松江支部の前では「司法は住民を見捨てた」とか「私たちの声は届かなかった」などと書かれた紙が掲げられ、集まった人たちからは落胆のため息が聞かれました。申し立てた住民側の海渡雄一弁護士は「今回の裁判所の決定は、『原子力規制委員会が再稼働してもいいと言っているから裁判所もそれについては何も申しません』と言っているに等しい極めて不当な決定だ。申し立てを行った住民たちの思いを受け止めて頑張ってきたが、このような不十分な決定を受け取ることになったことは申し訳なく思っている。この決定を覆すために住民たちとともに今後も頑張っていきたい」と話していました。
申立人「到底受け入れられない」
仮処分を申し立てた鳥取県の土光均さんは「とにかく残念のひと言だ。規制基準に合格していれば、基本的には安全だということを裁判官が追認していて、到底受け入れられない思いだ。この結果を糧に裁判だけではなく、さまざまな自治体にも積極的な運動をしていきたい」と話していました。
住民側 今後について“引き続き再稼働に反対していく”強調
仮処分の申し立てをした住民側は、松江市内で会見を開きました。この中で、海渡雄一弁護士は、「規制委員会が『いい』と言っているのだからもうそれでいいんだと思考停止してしまっていて、原発の安全性についての論証になっていない決定だと思う」としたうえで、「ひと言で今回の決定を評するとすれば、『行政追従の思考停止決定』だ」と述べました。また、大河陽子弁護士は、島根原発から10キロ圏内に行政機関などがあることや、高齢化が進む島根県内の状況に触れたうえで「避難計画の実効性を判断しなかった裁判所は司法の責任を放棄した。住民を見捨てるような判断をしていて極めて不当な決定だと思う」と述べました。
そして、今後について、申し立てをした松江市の住民の芦原康江さんは「2号機の再稼働はことし12月の計画なので、再稼働を止めるために大規模な集会を開くなどの活動を続けていきたい」と述べて、引き続き再稼働に反対していく考えを強調しました。
中国電力「当社の主張が認められ妥当な決定をいただいた」
中国電力コンプライアンス推進部門の高見和徳総務部長は松江市で開かれた記者会見で、「決定は当社の主張が認められたものであり、妥当な決定をいただいたと受け止めている。これまで同様、さまざまな機会を通して原子力の必要性や安全対策を引き続き説明していきます」と述べました。そのうえで、中国電力が予定していることし12月の再稼働について「今回の決定が再稼働に与える影響はなく、さまざまな安全対策工事などを進めていきたい」と話していました。
松江市長「市民の皆様の安心・安全を最優先に」
島根原発がある松江市の上定市長は当事者でないためコメントは差し控えたいとしたうえで「中国電力には、今後も市民の皆様の安心・安全を最優先に安全対策に万全を期していただきたい」としています。
島根県丸山知事「中国電力は安全管理徹底を」
島根県の丸山知事は当事者でないため事情を承知していないとしたうえで「中国電力に対しては安全管理を徹底したうえで、必要な安全対策工事や使用前事業者検査を進めていくよう求めていく。また、原子力規制委員会による保安規定変更認可の審査や使用前確認が継続中であり、引き続き厳格な審査、確認を求めていく」とコメントしています。
林官房長官「安全最優先が大前提」
林官房長官は午前の記者会見で「再稼働にあたっては、高い独立性を有する原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進める政府の方針に変わりはない。安全最優先が大前提で、事業者が地域の皆さんに丁寧な説明を尽くすことが重要だ」と述べました。
【3つの主な争点に対する裁判所の判断】
決定は、住民側の主張を全面的に退け、島根原発2号機の再稼働を認める内容でした。3つの主な争点に対する裁判所の判断をまとめました。
1、想定される地震の揺れ
最大の争点は、原発の敷地内で想定される最大の地震の揺れの強さを示す「基準地震動」が妥当かどうかでした。住民側が「中国電力の想定は低すぎて不合理だ」と主張したのに対し、中国電力側は「評価は過小ではない」と反論していました。これについて裁判所は、「中国電力は、科学的知見に基づいて導かれた数値より大きくなることや特異なものになる地域性がないことなどを確認した上で評価し、原子力規制委員会による確認も経ている」と指摘。そのうえで「数値が直ちに不合理だとはいえず、規制委員会の審査に誤りや欠落があるともいえない」として、住民側の主張を退けました。
また、住民側は、原発の敷地からおよそ1.3キロしか離れておらず「原発に極めて近い断層」である宍道断層の検討が不十分だと主張していましたが、これについては、規制委員会が審査の過程で問題点を指摘し、対応を指示したうえで許可をした経緯などを踏まえ、問題はないと判断しました。
2、火山の噴火の想定
続いて、火山が噴火した際の想定です。島根原発2号機から55キロほど西にある三瓶山について住民側は「過去の大規模な噴火と同じ規模の噴火が起きれば重大な事故につながる」と主張していました。しかし、裁判所は「文献や中国電力が行った地質調査の結果を踏まえると、原発の敷地内に100センチを超える厚さの火山灰が降るおそれがあるとはいえない」として認めませんでした。
3、避難計画の実効性
事故が起きた際の「避難計画の実効性」も争点となりました。島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地する原発で、30キロ圏内には、島根県と鳥取県の合わせておよそ45万人が生活しています。住民側は、ことし1月に起きた能登半島地震も例に出して避難計画が不十分だと訴えましたが、裁判所は「島根原発2号機で重大な事故が起きる具体的な危険性が証明されたとはいえない」として、避難計画の実効性を判断することなく退けました。
引用元 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240515/k10014449471000.html
みんなのコメント
- あ!こいつらに電気代払ってもらおう!
- 4人て
- 変な左翼団体とマスコミのマッチポンプ、もう止めませんか
- その旗わざわざ作ったんんか 安くないだろうに
- 争点が違う。確定できない災害の起きる可能性で争ってたら電力会社の思うままに事が進んで当然や。 そうではなく起きた時にどう対処するのかで争って、その為の積立を電力会社に要求するよう持って行かなきゃ
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