性同一性障害を巡る職場環境について国の指針がない中、最高裁の判断は行政や企業などの取り組みにも影響しそうだ。国側は裁判で、トランスジェンダー女性が女性用トイレを利用することには、一定の反対意見があると主張する。一方、金沢大と住宅設備大手LIXIL(リクシル)などの共同研究によると、抵抗感はこの5年で減少し、社会の意識が変化していることがうかがわれる。
研究では2017年と22年、トランスジェンダーの職場トイレの利用に関する意識調査を実施。調査人数は17年は約3万人、22年は約6万人。トランスジェンダーも含まれ、男女比はおよそ半々。
続きを読む出生時の性別と性自認が一致するシスジェンダーの男女を対象に、自分が利用するトイレを、トランスジェンダーが自身の性自認に沿って利用することについて聞いたところ、「抵抗はない」と回答した女性は22年は42.3%で、17年から10ポイント以上増加。「どちらかといえば抵抗はない」を含めると7割に上った。男性も22年の調査で、「抵抗はない」「どちらかといえば抵抗はない」を合わせて7割だった。
性的少数者に関する研修などを受けた人をみると、22年は、トイレ利用について「抵抗はない」と答えた割合が全体で50%で、研修を受けたことがない人よりも4.6ポイント高かった。
研究会の座長を務める金沢大の岩本健良准教授(ジェンダー学)は「職場などで正しい知識を啓発することが信頼感につながる」と指摘。人権の尊重が企業の責任として国際的に求められる中、「経済産業省は率先して差別のない取り組みを進めるべきだ」と訴える。(小嶋麻友美)
引用元 https://www.tokyo-np.co.jp/article/257158