<連載 この国で生まれ育って 「入管法改正」の陰で>解説 東京新聞より
在留資格がない状態で日本で暮らす外国人に対し、働くことを禁じるなど生活を厳しく制約する「仮放免」制度。国連は人権侵害の疑いが濃いとして改善を促すが日本は応じようとしない。政府が今国会で成立を急ぐ入管難民法改正案についても、外国人を取り巻く環境がさらに悪化するとして識者から批判が相次ぐ。(池尾伸一)
国連の人権に関する委員会の勧告にも記載された“karihomensha”の文字
国連の「自由権規約委員会」は2022年秋「仮放免」の外国人について労働も生活保護受給も禁じていることに、日本語読みをローマ字表記して懸念を表明。日本に「収入の手段を与えるべきだ」と要請した。
続きを読む「子どもの権利委員会」も19年、仮放免の子が医療も十分受けられない状況を問題視し「保健サービスを与えるべきだ」と求めた。だが、日本は勧告を事実上無視している状況だ。
在留資格をめぐる出入国在留管理庁(入管庁)の判断基準自体についても、疑問の声が聞かれる。
在留資格がなく退去命令を出された人の多くは命令に応じるが、帰国を受け入れられない人が入管施設や「仮放免」で暮らす。入管庁は彼らについても「本来早く帰国すべきだ」というが、入管問題に詳しい国士舘大学の鈴木江理子教授は「『帰らない』のではなく『帰れない』人も多い」と分析する。
鈴木教授によると、迫害から逃れ来日しながら難民と認定されず、退去命令が出ても迫害が怖いので帰国できないまま申請を繰り返す例が多いという。セレンさん一家もこのケースで、父親は「帰国したら逮捕される」と恐れる。
難民条約の批准国である日本は、迫害から逃れた人を難民として受け入れる義務を負う。しかし、認定率は21年0.7%、22年約2%にとどまり、25%(21年)のドイツなど他の先進国と比べ極端に低い。難民問題に詳しい渡辺彰悟弁護士は「日本は、命からがら逃げてきた人に迫害された証拠を厳格に求めるなど、ハードルを高くしすぎで、保護すべき人を保護できていない」と指摘する。
労働目的で来た人たちに関しても入管庁は、子どもが10年以上日本で育った場合などには「積極的に在留資格を与える」とのガイドラインを定めながら、許可件数を年々減らしている。
入管難民法改正案は、仮放免に加え、収容施設外の外国人を「監理人」と呼ばれる民間人の監督下に置く制度を新設する。だが、退去命令が出た人は従来通り労働は禁止。違反には懲役も含め罰則も導入される。
現行法は難民申請中の人の強制送還を禁じているが、改正案は申請回数が2回を超えると、申請中でも強制送還できるようになる。親が送還されたり、家族ごと送還されたりする例が増えるとみられる。
入管問題に詳しい指宿昭一弁護士は「改革の方向が誤っている。難民認定の方法を国際基準に沿ったものに根本的に改める一方、仮放免の人々の生活条件も大幅に見直すことが急務だ」と国に改善を求める。
引用元 https://www.tokyo-np.co.jp/article/243517