[台北 16日 ロイター] – 米国務省は、台湾独立を支持しないとするウェブサイト上の記述を削除した。
13日に更新された台湾に関する最新のファクトシートで、「われわれは台湾独立を支持しない」との記述を削除したほか、米国防総省の技術・半導体開発プロジェクトへの台湾の協力に関する言及を追加し、米国は「該当する場合」に台湾の国際機関加盟を支持するとも記した。
台湾、中国の「いずれの側からの一方的な現状変更にも反対する」との立場は維持し、「台湾海峡両岸の相違が、強制のない平和的手段によって、両岸の人々が受け入れられる形で解決されることを期待する」とした。
台湾外交部(外務省)は16日、林佳龍外交部長(外相)が同ウェブサイトで示された「米台関係に対する支持と前向きな姿勢を歓迎する」との声明を出した。
米国務省や中国外務省はコメント要請に応じていない。
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【Tokyo.Tweetさんの投稿】
引用元 https://jp.reuters.com/world/taiwan/LWRLDS57ERJKXJ6GXHXZ57RXJA-2025-02-16/
米国務省が「台湾独立を支持しない」とするウェブサイト上の記述を削除したというニュースは、国際社会に大きな影響を与えるものだと感じた。米国の対台湾政策がどのように変化しているのか、その背景にはどんな意図があるのか、改めて考える必要がある。
今回の修正では、「台湾独立を支持しない」という文言が削除されただけでなく、「台湾の国際機関加盟を支持する」との記述が追加された。これに対し、台湾の外交部は歓迎の意を示している。米国が台湾との関係を強化しつつあることは明らかだが、中国との緊張関係を考えれば、これが単なる外交的なジェスチャーではないことも分かる。
まず、米国がこのような変更を行った背景には、中国の軍事的圧力の増加があるだろう。近年、中国は台湾に対して軍事的威嚇を強めており、特に台湾周辺での軍事演習や戦闘機の領空侵犯が頻発している。こうした状況の中で、米国が台湾への支持を強調することで、中国への牽制を強めたと考えられる。
しかし、米国は依然として「いずれの側からの一方的な現状変更にも反対する」との立場を維持している。これは、中国が武力行使によって台湾を統一することにも、台湾が独立を宣言することにも反対するという姿勢を意味している。つまり、米国は台湾への支持を強めながらも、直接的に「独立を支持する」と明言することは避け、あくまで「現状維持」の立場を取り続けている。
一方で、「台湾の国際機関加盟を支持する」との記述が加えられたことは、台湾にとって大きな意味を持つ。台湾は現在、国際連合(UN)をはじめとする多くの国際機関に正式加盟できていない。これは、中国が「一つの中国」原則を主張し、台湾の国際的な地位を認めないよう各国に圧力をかけているためだ。しかし、米国が「該当する場合には台湾の加盟を支持する」と明言したことで、今後、台湾の国際的な立場が強化される可能性がある。
この動きに対し、中国がどう反応するかも重要なポイントだ。これまで中国は、台湾を自国の一部と主張し、国際社会に対してもその立場を貫いてきた。もし米国が台湾の国際機関加盟を積極的に後押しすれば、中国は強く反発し、米中関係はさらに悪化する可能性が高い。すでに米中関係は貿易摩擦や人権問題、南シナ海の領有権問題などを巡って緊張状態が続いている。今回の修正が、新たな対立の火種になることは避けられないだろう。
台湾側の歓迎の姿勢も理解できる。台湾は長年、国際社会での地位向上を目指してきたが、中国の圧力によって多くの国が台湾との正式な外交関係を持つことを避けてきた。しかし、米国の支持が強まれば、台湾を取り巻く国際環境は変わる可能性がある。特に、日本や欧州諸国がこれに追随すれば、台湾の国際的な立場は大きく前進することになるだろう。
また、米国は今回の修正と同時に、台湾との技術・半導体開発プロジェクトへの協力についても言及している。これは単なる外交的なメッセージではなく、実際の経済・軍事戦略とも深く関わっている。台湾は半導体産業において世界的に重要な地位を占めており、特にTSMC(台湾積体電路製造)は世界トップクラスの技術を持っている。米国が台湾との技術協力を強化することは、経済的な理由だけでなく、中国への牽制という側面もある。
この一連の流れを見ても、米国は台湾を強く支援しながらも、中国との関係を完全に断ち切るつもりはないように思える。米国は台湾を重要なパートナーと位置付ける一方で、中国との対立を極端にエスカレートさせることを避けようとしている。今回の修正がそのバランスを取るための動きであることは明らかだ。
しかし、台湾問題は単なる外交の問題ではなく、日本を含むアジア全体の安全保障にも関わる重大な問題だ。もし中国が台湾への圧力を強め、それに対して米国が軍事的な支援を強化すれば、地域全体が不安定になる可能性がある。日本にとっても、台湾有事は決して他人事ではなく、経済や安全保障の面で大きな影響を受けることになる。
今回の米国の動きを受けて、日本政府もどのように対応するのかが注目される。日本はこれまで台湾との関係を重視しつつも、中国とのバランスを取りながら慎重な対応を続けてきた。しかし、国際情勢が変化する中で、日本が台湾との協力をどこまで進めるのか、また中国との関係をどう維持するのかが、今後の大きな課題となるだろう。
米国務省のウェブサイトの修正は、一見すると些細な変更のように見えるかもしれないが、その背後には大きな戦略的意図がある。米国は台湾との関係を強化しながらも、あくまで「現状維持」の立場を維持し、中国との対立を過度にエスカレートさせないよう慎重に動いている。しかし、この微妙なバランスがどこまで維持できるのかは不透明だ。
台湾を巡る情勢は今後も目が離せない。米国の動きが中国を刺激し、さらなる緊張を生む可能性もある。日本としても、台湾問題にどう向き合うべきか、真剣に考える時が来ている。
執筆:編集部A