内閣府は12日に公表した日本経済リポート(ミニ白書)で、家計の貯蓄率が新型コロナウイルス禍前の水準を上回って推移している背景を探った。共働き世帯の増加で家族全体の所得は増えたが、インフレや長生きへの備えから、消費にお金を使わない傾向が目立っている。
ミニ白書は足元の経済動向を分析するもので、年1回公表する。
貯蓄率は仕事で稼いだ収入などを含む可処分所得のうち、どの程度を貯蓄にまわしたかを示す。高すぎる場合はモノやサービスにお金を使う意欲が消費者の間で低く、経済の循環がうまく回っていないとみることもできる。
内閣府によると、家計の貯蓄率(四半期は季節調整値)は24年4〜6月期に4.4%、7〜9月期に3.9%となり、新型コロナ禍前の19年の2.9%を上回って推移する。
ミニ白書では貯蓄率が上昇する背景に、共働き世帯の拡大があると指摘した。
総務省の家計調査によると、勤労者世帯のうち共働き世帯が多くを占めると考えられる「有業人員2人以上世帯」は23年に66.2%で、上昇傾向が続く。その上で、共働き世帯はそうでない世帯に比べ「基礎的な支出を増やす必要がない」と分析し、構造的に消費性向が下がりやすくなる傾向があるとした。
物価高での節約志向の広がりも消費低迷の背景だと論じた。24年の消費者物価指数は生鮮食品を除くベースで前年比2.5%上昇した。3年連続で2%を上回った。コメや肉類、チョコレートなど身近な食料の価格高騰が続いている。
長寿化による「長生きリスク」も貯蓄率の押し上げ要因にあると強調した。不確実性が高まる中、医療や介護、生活への出費をどれだけ準備すればいいか判断が難しくなっている。
金融広報中央委員会が世帯主の年齢が60歳未満の2人以上世帯に調査したところ33.4%が「生活設計を立てている」と答えた。このうち、約4割が「20年先まで」「20年より先まで」生活設計を立てているとした。
一連の分析を踏まえ内閣府は、今後の個人消費の回復には「賃金・所得の伸びが物価上昇を持続的に上回り、家計がこれを前提に意思決定できる環境整備が重要」と結論づけた。
[全文は引用元へ…]
【T.Mさんの投稿】
引用元 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1234J0S5A210C2000000/
日本の経済状況を見ていると、本当に政府は何を考えているのか分からなくなる。内閣府が発表したミニ白書によれば、家計の貯蓄率がコロナ禍前より高い状態が続いているそうだが、その理由を「共働き世帯の増加」「インフレの影響」「長寿化への備え」などと分析しているという。要するに、政府の考えでは「共働きで世帯所得が増えているのに、なぜ消費しないのか」という発想らしい。そんな簡単な話ではないことくらい、少し考えれば分かるはずだ。
なぜ消費が低迷しているのか、それこそ庶民の生活を見れば一目瞭然だ。毎年のように税金は増え、社会保険料も上がり続け、手取りは減る一方。そこに加えて物価高が直撃し、生活必需品まで値上がりしているのだから、可処分所得がいくら増えようと、貯蓄に回すしかない。政府がどれだけ経済成長を叫ぼうが、実際に家計に余裕がなければ財布の紐は緩むはずがない。むしろ、将来の不安が増す一方で、少しでも備えておこうと考えるのが当然の流れだ。
そもそも、このミニ白書の分析を見ていると、政府が国民の生活実態をまるで理解していないことがよく分かる。貯蓄率が上昇しているのは「共働き世帯の増加」だけではなく、「増税と物価高による消費抑制」という側面があるはずだ。だが、内閣府はそうした点にはほとんど触れず、貯蓄が増えている理由をもっともらしく並べているに過ぎない。彼らは本気で「長寿化が貯蓄率を押し上げている」と思っているのだろうか。実際には、「将来の社会保障があてにならないから、自分で備えないと生きていけない」と国民が考えた結果に過ぎないのではないか。
さらに、政府は「賃金・所得の伸びが物価上昇を上回る環境を整備することが重要」と結論づけているが、それを実現できていないからこそ、消費が回復しないのではないか。毎年のように過去最高の税収を記録しながら、それを国民に還元するどころか、さらなる負担を求める姿勢を見せている。無駄な事業に税金を使いながら「まだ足りない」と言い続ける姿勢こそが、経済の停滞を招いているのではないか。
国民の消費が低迷する最大の理由は、将来に希望が持てないからだ。年金制度も不透明、社会保障も削減の方向に進んでいる。これでは貯蓄に回さざるを得ない。政府が何よりも先にやるべきことは、税負担を減らし、国民が安心してお金を使える環境を作ることではないのか。
執筆:編集部B