#USAID狂想曲
米トランプ大統領は国際開発局(USAID)を閉鎖し、1万人以上いるスタッフを300人にまで減らす方針を打ち出した。
USAIDは国際協力を管轄する連邦政府の機関で、年間680億ドルにのぼる世界一のアメリカの援助をとり仕切る。
トランプ政権はUSAIDが「ムダが多く、納税者の負担に見合わない」と主張する他、メディアをコントロールしてきたとも批判する(この点はロシアメディアも同じ)。
USAID閉鎖は行政の効率化を担当するイーロン・マスク氏との合意に基づいて行われたと報じられている。
トランプ政権はそもそも途上国支援に消極的で、USAID閉鎖を歓迎する支持者がいる一方では、援助額世界一のアメリカの機能停止は「援助分野における地震のような衝撃」とも表現される。
日本国内のSNSでもこの問題は大きな関心を呼び、(マスクの所有する)Xでは#USAIDがトレンド入り(2月11日現在)して100万以上の投稿があった。
[全文は引用元へ…]
【六辻彰二さんの投稿】
引用元 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dc392bad22e58c684bbb8b61d902c6ebc1099af8
トランプ大統領がUSAID(アメリカ国際開発庁)の閉鎖を決定したというニュースを見て、ついにこの時が来たかという思いを抱いた。USAIDは長年、国際協力を掲げながらも、その実態はアメリカ政府の意向を押し付ける機関として機能してきた部分がある。トランプ政権がこの機関のムダを指摘し、行政の効率化の一環として閉鎖を進めるのは、ある意味で必然だったのではないか。
USAIDの年間予算は680億ドルとされ、これは世界最大の援助額だ。しかし、トランプ政権が主張するように、その資金が本当に適切に使われていたのかは疑問だ。例えば、途上国支援の名目で送られた資金が、現地の政府や一部の団体によって私的に流用されたケースも少なくない。こうした問題が指摘され続けていたにもかかわらず、大規模な見直しが行われることはなかった。トランプ大統領は、こうした既得権益にメスを入れるという姿勢を明確に打ち出しており、それが支持者からの歓迎を受けているのだろう。
また、USAIDの「メディアコントロール」の問題についても見逃せない。トランプ政権は、この機関が特定のメディアに資金を提供し、報道内容に影響を与えていたと指摘している。実際に、USAIDは「民主主義促進」という名目のもと、海外のメディアやジャーナリストに多額の資金を提供してきた。これが純粋に報道の自由を支援するためのものなら問題はないが、実態としてはアメリカ政府の意向を反映させるための「情報操作」に使われていたのではないか。
ロシアのメディアも同様の指摘をしており、USAIDが国際的な世論形成に関与していたことは明白だ。例えば、東欧やアフリカ諸国のメディアに対し、特定の政治的スタンスを取るよう働きかけていたという報告もある。これでは、途上国の自主的な発展を促すどころか、アメリカの価値観を押し付けるための道具にされていたと考えざるを得ない。
今回のUSAID閉鎖には、イーロン・マスク氏との合意が関係していると報じられている。マスク氏はこれまで、政府の官僚機構の肥大化やムダの多さを批判してきた。彼の考えは、できるだけ効率的な行政運営を目指し、不必要な組織を整理するというものだろう。トランプ政権はこの方針に賛同し、USAIDの人員を1万人以上から300人程度に削減するという大規模なリストラを決定した。
この動きに対しては、当然ながら賛否が分かれる。USAIDは長年にわたって多くの国に援助を行い、インフラ整備や教育支援などの分野で一定の成果を上げてきたという評価もある。しかし、その資金の使い道に透明性が欠けていたことや、一部の国々に対して政治的圧力をかける手段として使われていた可能性を考えると、その存続を疑問視する声が出るのも当然だろう。
SNS上では、この問題について大きな議論が巻き起こっている。特に、マスク氏の所有するX(旧Twitter)では、「#USAID」がトレンド入りし、多くのユーザーが意見を交わしている。これは、USAIDの閉鎖が単なる行政改革にとどまらず、国際的なパワーバランスにも影響を与える可能性があることを示している。
トランプ政権の政策には、過激とも思える決定が多いが、今回のUSAID閉鎖については合理的な側面もある。行政の無駄を削減し、アメリカ国民の利益を優先するという方針は、多くの支持を得ている。だが、一方で、これによって本当に支援を必要とする人々が影響を受ける可能性もあるため、その点については慎重な対応が求められる。
日本にとっても、USAIDの閉鎖は無関係ではない。日本の国際協力機関であるJICA(国際協力機構)とUSAIDはこれまで密接に連携してきた。USAIDが撤退することで、日本の負担が増える可能性も考えられる。特に、東南アジアやアフリカにおける援助活動では、アメリカの関与が薄れることで、日本が主導的な役割を果たさなければならなくなるかもしれない。
この決定が国際社会にどのような影響を及ぼすのか、今後の展開を注視する必要がある。USAIDが果たしてきた役割をどの機関が引き継ぐのか、また、国際援助のあり方がどのように変化するのかは、各国の政策にとっても重要な課題となるだろう。
いずれにせよ、今回のUSAID閉鎖は、単なる行政改革にとどまらず、アメリカの外交戦略そのものを見直す大きな転換点となる可能性がある。これが本当にアメリカ国民の利益につながるのか、あるいは国際的な影響が大きすぎるのか、今後の動向を見極める必要がある。
執筆:編集部A