中国の高齢者の間でHIV感染が拡大し、社会問題になりつつある。なぜここまで感染者が急増しているのか──中国に詳しい作家の譚璐美氏が解説する。
感染経路は無防備な性行為
中国で高齢男性のHIV感染が急増している。
中国の「国家エイズ/性病予防管理センター」によると、2024年6月30日現在、同国のHIV感染者数は約133万人で、死者数は累計で約47万人である。
また、2023年に報告された新規HIV感染者11万人のうち、60歳以上の高齢者が2万2000人以上にのぼり、約20%を占めている。性別では、男性が圧倒的多数を占め、感染経路は異性間によるものが90%を超えた。
米国の政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によれば、中国におけるエイズ流行の特徴は、若者と高齢者の患者数が他の年代に比べて多く、「M」字型であることだ。とりわけ60歳以上の高齢者のHIV感染の割合は年々増加傾向にあり、2035年には同国のHIV感染者数の30%を超えると予想されている。
ちなみに、世界全体のHIV感染者数は約3990万人。2023年の新規感染者数は130万人で、最多国はアフリカで占められている。
つまり、世界のなかで、中国のHIV感染者数は突出して多くはないが、高齢男性の感染率が際立って高いのである。
なぜ、高齢者のHIV感染が急増しているのか。その理由は、彼らが生きてきた時代背景と密接な関係があるだろう。
現在60~80歳の人々は、1945~65年に生まれ、青春時代を文化大革命期(1967~1977年)の政治的混乱の中で過ごしてきた。当時は「性行為は悪徳である」という観念が根強く、そのため40~50歳代になっても性行為を後ろめたく感じたり、女性はそうした心理的要因から不感症になったりして、禁欲的な結婚生活を過ごしてきた。
それが90年代以降、国が急速な経済成長で豊かになると、自由度が増して離婚が増え、あるいは配偶者と死別し、成長した子供は都会へ出て行くなか、ひとり暮らしになった高齢者が多くなった。そうした高齢者は生理的に必要なときには、性的サービスを提供する風俗的に通うようになった。価格は安く、わずか20~30元(約430~650円)で、孤独の寂しさから話し相手を求めていく場合もあり、親しくなった相手の元へ繰り返し通うことも少なくない。
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【もえるあじあ ・∀・さんの投稿】
引用元 https://courrier.jp/columns/390324/?utm_source=ranking_03
中国において高齢者のHIV感染が急増し、深刻な社会問題になりつつある。2024年6月30日時点で、中国国内のHIV感染者数は約133万人、死者数は約47万人に達している。これは「国家エイズ/性病管理センター」の最新の統計によるものだ。特に注目されているのが、高齢男性の感染率の高さである。
アメリカの政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によれば、中国におけるHIVの流行は年齢層による特徴があり、若者と高齢者の患者数が突出している。この傾向は「M字型」とも呼ばれ、他国とは異なる中国独自の感染動向となっている。世界全体で見れば、中国のHIV感染者数は特別多いわけではないが、高齢男性の感染率が非常に高い点が問題視されている。
なぜ中国の高齢者、特に男性においてHIV感染が急増しているのか。その背景にはいくつかの要因がある。現在の60~80歳の人々は、1945~1965年の間に生まれた世代であり、青春時代を文化大革命(1967~1977年)の中で過ごした。この時期は政治的混乱が続いたため、個人の自由な交際が制限され、恋愛や結婚の機会が少なかった人も多い。
この世代が高齢になり、家族形態にも変化が起きた。成長した子供たちは都市部へ移住し、親世代は地方や郊外に取り残されるケースが増加。特に農村部では、高齢男性の独居率が高くなった。彼らは社会的に孤立しやすくなり、寂しさを紛らわせるために、安価な性サービスに頼る傾向が強まった。
現在、中国では低価格の性産業が広く存在している。価格はわずか20~30元(約430~650円)と安価であり、経済的に余裕のない高齢者でも利用しやすい。地方都市や農村部では特にこうしたサービスが盛んであり、定期的に通う高齢者も少なくない。問題なのは、こうした場での安全対策が不十分であり、HIVをはじめとする性感染症が広がりやすい環境が整ってしまっていることだ。
さらに、中国の高齢者はHIVや性感染症に関する知識が乏しい。若い世代と異なり、学校で性教育を受ける機会がなかったことも影響している。避妊や感染予防の知識が不足しているため、感染リスクが高まっている。仮に症状が出たとしても、「まさか自分がHIVに感染するはずがない」と考え、病院に行くことをためらうケースも多い。その結果、感染が進行し、発覚した時には既に重症化している場合も珍しくない。
また、医療機関での診断や治療に対する心理的な抵抗も問題視されている。中国ではHIVに対する偏見が依然として根強く、特に高齢者の間では「恥ずかしい病気」と認識されている。周囲の目を気にして検査を受けない人も多く、結果として感染が拡大してしまう状況が続いている。
政府もこの問題に対処しようと試みてはいるが、根本的な解決には至っていない。中国ではHIV対策の一環として無料のコンドーム配布や検査体制の強化を進めているものの、都市部と農村部の間で医療アクセスの格差が大きく、地方では十分に行き届いていないのが現状だ。
さらに、高齢者向けの啓発活動が不足している点も課題となっている。若年層に対する性教育は近年改善されてきたものの、高齢者向けのHIV予防教育はほとんど行われていない。そのため、多くの高齢者がリスクを理解しないまま行動し、感染が拡大する要因になっている。
この問題は中国社会全体にとって深刻な影響を及ぼしかねない。HIV感染が広がれば、医療費の増大や社会保障の負担増につながるだけでなく、偏見や差別の拡大も懸念される。特に、中国は急速な高齢化が進んでいる国であり、高齢者の健康問題が国家の安定に直結する。今後、政府や社会がどのような対応を取るのかが問われている。
中国の高齢者におけるHIV感染の急増は、単なる医療の問題ではなく、社会構造の変化や教育の不足、経済的要因などが絡み合った結果である。この問題を解決するためには、高齢者向けの感染予防対策を強化し、啓発活動を充実させることが不可欠だ。感染拡大を防ぐために、どのような対策が求められるのか、今後の動向が注目される。
日刊スポーツによると 政治ジャ…