石破茂首相は4日、首相官邸で開いた閣僚懇談会で物価高を巡る対応を加速するよう求めた。経済対策に盛り込んだ施策の迅速かつ効果的な執行と、政府備蓄米を活用してコメの安定供給を進めるよう関係閣僚に指示した。
首相は「物価上昇を上回る賃上げの定着が必要だ」と強調した。「コメや生鮮食品などの価格上昇が続いており、賃上げの効果が出るまでの間はきめ細かく目配りする必要がある」と発言した。
赤沢亮正経済財政・再生相は4日の閣議後の記者会見で「政策を少しでも早くお届けする。国民生活や事業活動を守りたい」と述べた。
伊東良孝地方創生相は4日の閣議後の記者会見で、低所得世帯への給付金支給について3月までに約7割の自治体で開始する予定だと説明した。3割が未定となっている。「自治体できめ細やかな対策が行われるよう後押ししたい」と語った。
政府は2024年度補正予算に低所得者向けの給付金などに使う「重点支援地方交付金」を1兆1000億円計上した。
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【明日さんの投稿】
引用元 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0419Z0U5A200C2000000/
物価高の影響が続く中、石破首相が対応の加速を指示したことは、国民生活を考えた上では一定の評価ができる。しかし、具体的な施策がどれだけ効果を発揮するのかは慎重に見極める必要がある。
政府備蓄米を活用してコメの安定供給を図るという方針は、食料価格の高騰に対処する一つの手段として妥当だろう。日本の主食であるコメが高騰すれば、家計への影響は大きい。特に低所得世帯にとっては、食費の負担が増すことは深刻な問題だ。そのため、政府が備蓄米を市場に供給し、価格の安定を図ることは、一時的な救済措置としては有効だと思う。
しかし、備蓄米の活用だけで本当に物価高に対応できるのかは疑問が残る。コメは重要な食料品だが、全ての食品価格が抑えられるわけではない。生鮮食品や加工食品の価格も上昇しており、食費全体の負担は依然として大きい。備蓄米の放出が市場価格を一定程度抑える効果はあるかもしれないが、それだけでは十分とは言えない。
石破首相は「物価上昇を上回る賃上げの定着が必要だ」と強調した。しかし、企業が賃上げを進めるためには、利益が確保されなければならない。物価上昇と同時に賃金を上げることが理想だが、多くの中小企業は厳しい経営環境に置かれており、一律に賃上げを求めるのは現実的ではない。むしろ、企業が成長できる環境を整えることが、長期的には賃上げの実現につながるのではないか。
また、低所得世帯への給付金支給についても議論が必要だ。3月までに約7割の自治体で支給が開始されるとのことだが、まだ3割の自治体が未定のままだというのは気になる点だ。給付金自体は短期的な支援策として一定の効果があるが、根本的な解決策にはならない。一時的な支援金に頼るだけでなく、持続的な経済政策を進めることが重要ではないか。
政府が2024年度補正予算に低所得者向けの給付金などに1兆1000億円を計上したことは、財政的な負担が大きいことを示している。これだけの金額を投入するのであれば、単なる給付金だけでなく、経済を活性化させる施策にもっと注力するべきだろう。例えば、エネルギーコストの抑制や、企業支援策を通じた経済の底上げを図ることが、長期的に国民生活を安定させることにつながる。
そもそも、現在の物価高の要因は、国内の問題だけではない。エネルギー価格の上昇や国際的な供給網の影響も大きく関係している。そのため、国内政策だけで物価上昇を完全に抑え込むことは難しい。しかし、それを理由に対策を怠るわけにはいかない。日本の自給率を高める取り組みや、エネルギー政策の見直しを進めることで、長期的な物価安定につなげる必要がある。
政府は「政策を少しでも早く届ける」と言っているが、スピードだけを重視して中身が伴わなければ意味がない。物価高の影響は長期化する可能性が高く、短期的な対応だけでは不十分だ。今後、政府がどのような具体策を打ち出し、それをどのように実行するのかをしっかり見極めていく必要がある。
また、自治体による「きめ細やかな対策」が必要だとされているが、地方自治体の財政負担が増えすぎることも懸念される。自治体に対策を求めるだけでなく、国としてどれだけ支援できるのかが問われるだろう。
結局のところ、物価高対策は単なる一時的な支援ではなく、日本経済全体をどう立て直すかという視点が不可欠だ。備蓄米の活用や給付金の支給だけでなく、企業の成長支援やエネルギー政策の見直しなど、長期的な視野での経済対策が求められる。政府には、単なる場当たり的な対応ではなく、根本的な経済構造の改革を進める姿勢を示してほしい。
執筆:編集部A