【ロンドン=時事】ベルギーで3日、北部オランダ語圏の分離独立を掲げる右派の第1党「新フランデレン同盟(N-VA)」のデウェーフェル党首(54)が新首相に就任した。欧州メディアによると、オランダ語圏の民族主義者が首相に就くのは初めて。同氏は不法移民の取り締まり強化などを公約する一方、近年は分離独立の主張を抑え、現実的な政策…
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【時事ドットコムさんの投稿】
引用元 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO86505450U5A200C2EAF000/
ベルギーで新たにデウェーフェル首相が誕生し、5党による連立政権が発足した。N-VAはフランデレン地域の分離独立を掲げてきた政党であり、民族主義的な立場を持つ。オランダ語圏の民族主義者がベルギーの首相になるのは史上初のことで、国内外で注目を集めている。
彼の政策の特徴として、不法移民の取り締まり強化が挙げられる。欧州では移民問題が深刻化しており、治安の悪化や社会保障の負担増が各国で議論されている。ベルギーも例外ではなく、特にフランデレン地域では移民への不満が高まっている。デウェーフェル首相がこの問題にどこまで踏み込むのか、今後の動向が気になるところだ。
N-VAはこれまでフランデレン地域の独立を主張してきたが、近年はその姿勢を抑えて現実的な政策にシフトしている。分離独立を目指す政党が国全体の政権を担うというのは矛盾にも見えるが、彼らにとっては影響力を高める戦略なのかもしれない。実際にどこまで独立の方針を押し進めるのかは未知数だ。
ベルギーの政治は非常に複雑で、フランデレン(オランダ語圏)とワロン(フランス語圏)の対立が根深い。両地域は言語も文化も異なり、経済格差も大きい。フランデレンは比較的裕福で経済が発展しているのに対し、ワロンは失業率が高く、補助金に頼る部分が多い。このような状況では、フランデレンの住民が「自分たちの税金でワロンを支えるのは不公平だ」と感じるのも無理はない。
この分断は、単なる国内問題にとどまらず、欧州全体に影響を与える可能性がある。EUの統合が進む中で、一部地域の独立運動が活発化すれば、他の国にも波及するかもしれない。スペインのカタルーニャ独立運動やイタリアの北部独立派など、欧州各国には似たような動きがある。ベルギーの動向次第では、こうした独立志向の地域に新たな火種を与えることになりかねない。
一方で、デウェーフェル首相が現実的な路線を取る可能性もある。N-VAが独立を掲げる政党とはいえ、今回の連立政権は右派だけでなく、中道やリベラル勢力も含まれている。彼が極端な政策を推し進めれば、政権運営が難しくなることは明らかだ。バランスを取るために、ある程度の妥協をすることは避けられないだろう。
移民政策についても、国民の期待が高い反面、EUとの関係を考えると強硬策を取るのは容易ではない。ベルギーはEUの中心に位置する国であり、ブリュッセルにはEU本部がある。移民政策で強硬な姿勢を示せば、EUとの摩擦が生じる可能性もある。フランスやドイツのような主要国が移民受け入れを推奨する中で、ベルギーだけが厳格な政策を取ることは難しい。
とはいえ、デウェーフェル首相は国民の支持を得るために、一定の強硬策を打ち出さざるを得ないだろう。移民問題に関しては、国民の不満が限界に達しており、曖昧な対応では支持を失う恐れがある。特に保守層からの期待は大きく、彼がどこまで強い姿勢を示せるかが試される。
また、経済政策にも注目が集まる。フランデレン地域は強い経済基盤を持つが、ワロン地域の経済は低迷している。政府としては、国全体の経済成長を考えなければならないが、フランデレンの支持層は「ワロンに税金を使うな」という意見を持っている人が多い。このジレンマをどう解決するのか、デウェーフェル首相の手腕が問われる。
国内の分裂を抱えながらも、ベルギーは欧州の要所にある重要な国だ。EUの中心としての役割を果たしながら、国内問題にどう向き合うのか。デウェーフェル首相の今後の動きに注目が集まる。
執筆:編集部A