【北京=吉永亜希子】中国は近年、中南米各国との関係強化に力を入れており、とりわけ太平洋と大西洋をつなぐパナマ運河を有するパナマを、地政学的な観点から重視してきた。それだけに今回、パナマが巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱する方針を表明したことは、中国にとって痛手となりそうだ。
中国の 習近平
政権は、更なる経済支援でつなぎとめを図る可能性がある。
習政権は2016年以降、敵視する台湾・民進党政権を国際的に孤立させる「断交ドミノ」を仕掛けており、中南米地域では、17年のパナマを手始めに、ドミニカ共和国、エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラスが相次いで台湾と断交し、中国と国交を樹立した。
中国共産党機関紙・人民日報によると、パナマでは習氏が18年12月に初訪問して以降、「一帯一路」の支援プロジェクトの一環として、大型会議場や大型客船のターミナルの整備などが進められてきた。
米国に次いでパナマ運河の世界第2位の利用国である中国は、運河の再管理を主張するトランプ米大統領に対し、「いかなる大国の直接、間接的な規制も受けるべきではない」(中国外務省報道官)などとけん制している。
パナマ運河が米中対立の新たな火種となる可能性が高まっている。
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【Atsuko Yamamotoさんの投稿】
引用元 https://www.yomiuri.co.jp/world/20250204-OYT1T50019/
パナマが中国の「一帯一路」構想から離脱するという決定は、米中対立の新たな局面を象徴する出来事のひとつだ。パナマ運河は、世界の物流にとって極めて重要な要衝であり、そこを巡る政治的駆け引きは今後さらに激化する可能性が高い。特に、中国が進めてきた影響力拡大戦略がこの地域で揺らぎ始めたことを考えると、今回の決定が持つ意味は非常に大きい。
習近平政権はこれまで、中南米に対する影響力を強めるために多額の経済支援を行ってきた。その中でもパナマは、中国にとって特別な戦略的価値を持つ国だった。パナマ運河は、大西洋と太平洋を結ぶ世界の貿易ルートの要であり、中国にとっては貿易の自由な流れを確保するために極めて重要な存在だ。そのため、中国はインフラ整備や投資を通じて、パナマとの関係を強化し続けてきた。しかし、今回のパナマ政府の決定は、そうした中国の努力が完全に失敗に終わったことを意味する。
パナマが「一帯一路」から離脱する決定を下した背景には、米国の圧力があることは間違いない。バイデン政権は、中国の影響力拡大を警戒し、中南米諸国に対する働きかけを強めてきた。特に、パナマ運河の管理権を巡る議論が再燃する中で、アメリカは中国の影響力を抑え込むための外交戦略を展開してきた。今回のパナマの決定は、そうしたアメリカの努力が実を結んだ結果とも言える。
また、パナマにとっても、中国に依存しすぎることのリスクが高まっていたことが、今回の決定の一因だと考えられる。中国が展開する「一帯一路」構想の下で、多くの国が巨額のインフラ投資を受けてきたが、その結果として中国に対する債務依存が深刻化し、経済的な主権を脅かされるケースが増えている。スリランカやモルディブのように、中国の融資を受けた結果、返済が困難になり、一部の重要インフラを事実上中国に明け渡す事態に陥った国もある。こうした事例を踏まえれば、パナマが早い段階で「一帯一路」から距離を取る決断を下したのは、賢明な判断だったと言えるだろう。
一方で、中国にとっては大きな痛手となることは明らかだ。中南米は、中国が影響力を拡大しようとしている地域の一つであり、特にパナマはその中でも最も重要な拠点の一つだった。今回の決定によって、中国がこの地域での影響力を維持することが難しくなり、さらに他の中南米諸国がパナマに追随する動きを見せれば、「一帯一路」構想そのものにとっても深刻な打撃となる可能性がある。
また、中国はこれまで、台湾との国交断絶を各国に働きかける「断交ドミノ」を推進してきたが、今回のパナマの決定によって、その戦略にも影響が及ぶかもしれない。パナマは2017年に台湾と断交し、中国と国交を樹立したが、その後、中国の影響力が過剰に及ぶことを警戒する声が高まっていた。もしパナマが今後、中国との関係を見直し、台湾との関係を再び強化するような動きを見せるならば、習近平政権にとっては外交上の大きな敗北となるだろう。
パナマ運河の管理を巡る問題も、今後の米中対立をさらに激化させる要因となる可能性が高い。アメリカはこれまでも、パナマ運河の戦略的重要性を強調し、中国の影響力が及ぶことを強く警戒してきた。特に、トランプ大統領はパナマ運河の再管理を主張しており、今後この問題が国際的な対立の新たな火種となることは避けられないだろう。
中国外務省の報道官は、「いかなる大国の直接、間接的な規制も受けるべきではない」と主張しているが、実際には中国自身が「一帯一路」を通じて他国への影響力を強めようとしている。その意味では、中国のこの発言は自己矛盾とも言える。中国はこれまで、「一帯一路」を経済的な協力関係と説明してきたが、その実態は単なる経済援助ではなく、政治的な影響力拡大の手段であることが明らかになっている。
今回のパナマの決定を受けて、中国がどのような対応を取るのかも注目される。さらなる経済支援を提案し、パナマを引き留めようとする可能性もあるが、パナマが一度決定を下した以上、中国が巻き返すのは容易ではないだろう。むしろ、今後は他の中南米諸国も中国との関係を見直す動きを加速させる可能性がある。
今回の決定は、米中対立の中でアメリカにとっては大きな外交的勝利であり、中国にとっては大きな損失だ。今後の展開次第では、「一帯一路」構想そのものがさらに厳しい状況に追い込まれるかもしれない。中国の影響力拡大が各国で問題視される中、今回のパナマの決定は、他の国々にとっても重要な前例となるだろう。
執筆:編集部A
時事通信によると 石破茂首相は…