23日投開票のドイツ総選挙の世論調査で首位を走る最大野党会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」への抗議デモが2日、ベルリンで行われ、警察によると16万人が参加した。
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【朝日新聞さんの投稿】
引用元 https://www.asahi.com/articles/AST227SY0T22UHBI002M.html?ref=rss
ドイツのベルリンで16万人規模のデモが行われたというニュースは、現在のドイツ社会が直面している移民政策をめぐる深刻な対立を象徴しているように感じる。今回のデモは、最大野党会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が移民規制の厳格化を求める決議案を可決させたことに対する抗議のために行われた。さらに、この決議案が右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の協力を得て成立したことが、さらなる波紋を広げている。
ドイツはこれまで長らく移民を受け入れてきた国の一つであり、多文化共生を掲げてきた。しかし、近年の不法移民の増加や治安の悪化が社会問題となり、移民政策に対する批判が高まっているのも事実だ。特に、2023年以降、移民流入の増加が著しく、国民の間でも移民政策の見直しを求める声が強まっていた。そのため、CDU・CSUが今回の決議案を提出した背景には、こうした国民の不満に応える狙いがあったのだろう。
移民規制の強化を求める決議案は、政府に対して国境管理の強化や不法移民の送還を徹底することを求める内容となっていた。この決議案に対して、与党は反対の立場を取っていたが、CDU・CSUはAfDの支持を得て可決させた。AfDは、移民に対して厳しい姿勢を取る政党として知られ、移民排斥を掲げることで一定の支持を集めている。このため、CDU・CSUがAfDの協力を得たことに対し、多くの国民が「極右政党と手を組んだ」として強い批判を浴びることになった。
CDU・CSUがAfDと連携したことに対する反発が今回の大規模デモにつながったと考えられる。ドイツでは、第二次世界大戦後、ナチズムの反省から極端な政治思想に対して非常に敏感になっており、極右政党との協力に対する拒絶感が強い。特に、AfDは過去に人種差別的な発言を繰り返してきたこともあり、そのイメージは決して良くない。そのため、CDU・CSUがAfDの協力を得たことが、多くの市民の怒りを買う結果となったのだろう。
しかし、一方で移民問題が深刻化しているのも事実だ。ドイツは2015年のシリア難民受け入れ以降、多くの移民を受け入れてきたが、その影響で治安の悪化や社会保障の負担増が問題視されるようになった。特に、最近では移民が絡む犯罪が増えていると指摘されており、国民の間には「このままでは社会が不安定になる」という懸念が広がっている。そのため、移民規制を強化すべきだと考える人も一定数いるのが現実だ。
今回のデモは、単なる抗議運動ではなく、ドイツ社会が抱える大きなジレンマを象徴しているとも言える。移民を受け入れ続けるのか、それとも規制を強化するのか。この問題は、単純に善悪で語れるものではなく、経済や治安、社会統合などさまざまな要素が絡んでいる。そのため、今回のデモが今後の選挙戦にも影響を与える可能性が高い。
CDU・CSUとしては、AfDとの協力をあくまで「戦略的なもの」として位置づけているかもしれないが、ドイツの有権者がそれをどう受け止めるかが鍵になる。もし、国民の間で「移民政策を厳しくするためなら、極右とも手を組むのは仕方がない」という意識が広がれば、CDU・CSUの支持率はそれほど落ちないかもしれない。しかし、「極右政党と協力するのは容認できない」という声が強まれば、CDU・CSUは大きな批判を受けることになるだろう。
今回のデモの規模を考えると、多くの市民がCDU・CSUの方針に反発していることは明らかだ。しかし、その一方で移民政策の見直しを求める声も無視できない。ドイツの政治は、今後この問題をどう扱っていくのか、非常に難しい舵取りを迫られることになるだろう。選挙を目前に控え、各政党がどのような姿勢を打ち出すのか注目したい。
執筆:編集部A