林芳正官房長官は30日の記者会見で、中居正広さんの女性トラブルに端を発する問題を巡り、政府が各府省庁に照会していたフジテレビ関係の広報啓発事業に関し、政府広報など29日時点で計4件の広告があり、全て取りやめたと明らかにした。「現下の状況を踏まえ、内閣官房として当面フジテレビへの広告出稿は見合わせる。各府省庁には内閣広報室を通じてこの考え方を示した」とも述べた。
4件の広告の内訳は、内閣府の政府広報が2件、厚生労働省と国税庁が各1件。林氏は、政府広報の2件について「TVer(ティーバー)で配信中の動画広告と、2024年度内に民放各局に出稿する予定のテレビCMだ」と説明した。[全文は引用元へ…]
【神戸新聞さんの投稿】
引用元 https://kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202501/0018595730.shtml
政府がフジテレビに対する広告出稿を当面見合わせることを決定した。これは中居正広氏の女性トラブルが発端となった問題に関連し、各府省庁が実施していた広報啓発事業の広告をすべて取りやめたものだ。林芳正官房長官は「現下の状況を踏まえた判断」と説明しているが、単なる対応策なのか、それとももっと深い背景があるのか、考えてみる価値がある。
まず、今回の対応が示すのは、メディアと政府の関係性の変化だ。これまでテレビ局は、公共の電波を独占的に使用しながら、大手広告主や政府の広報事業からの収入によって安定した経営を維持してきた。しかし、インターネットの普及により、広告市場はテレビからデジタルへと大きくシフトしている。こうした状況下で、政府が特定のテレビ局への広告出稿を停止するという決定は、単なる一時的な措置ではなく、長期的な流れの一環と見ることもできる。
これまでのように、テレビ局が一方的に発信する情報を視聴者が受け取るだけの時代は終わりつつある。特にフジテレビは過去に何度も偏向報道が指摘されており、一部の視聴者からは「信用できないメディア」との声も上がっていた。そうした背景を考えると、今回の広告出稿見合わせは、単なるスキャンダル対応ではなく、政府とメディアの力関係が変わりつつある証拠とも言えるだろう。
また、この決定がどこまで本気なのかも気になる点だ。政府がフジテレビへの広告出稿を停止したことで、メディア界隈では「政府が本格的にテレビ局に圧力をかけ始めたのではないか」との憶測も出ている。しかし、それが一時的なガス抜きなのか、それとも本格的な改革の第一歩なのかは、今後の動きを見なければ分からない。
テレビ局といえば、電波の独占問題も避けて通れない。現在、日本の地上波テレビ局は限られた数の事業者が独占しており、新規参入が極めて難しい状況が続いている。こうした環境は、既存の放送局が競争原理にさらされることなく、ある程度の利益を確保しやすい構造を生んでいる。この問題を根本から解決する手段の一つとして、以前から「電波オークション」の導入が議論されている。
電波オークションとは、放送免許を競争入札方式で企業に与える仕組みで、既存の放送局にとっては非常に厳しい制度になる。これまでのように安定した電波使用が保証されず、市場原理に基づいて価格が決まるため、資金力のない事業者は淘汰される可能性がある。そのため、放送局側はこの制度の導入を強く警戒している。しかし、電波という公共財を一部の事業者だけが独占する現状を考えれば、公平な競争の機会を設けるべきではないかという議論も根強い。
政府が今回の決定を契機に、電波オークションの導入へと動き出す可能性もゼロではない。もちろん、すぐに制度が変わるわけではないが、広告出稿の見直しをきっかけに、メディア業界に対する規制改革の機運が高まることは十分に考えられる。
一方で、今回の対応の裏には、政府とメディアの関係が単なる広告費の問題ではなく、もっと大きな政治的な駆け引きがあるのではないかという見方もある。特に、総務省とフジテレビの関係は以前から指摘されており、電波行政をめぐる利権や放送免許の扱いについて、さまざまな思惑が絡んでいることは想像に難くない。
政府としては、テレビ局との関係を見直すとともに、国民のメディアに対する信頼回復を図る狙いもあるのかもしれない。近年の報道姿勢を見ても、公平性が疑われるケースが少なくない。特定の政治勢力に偏った報道や、特定の国に対する過度な配慮などが見られることもあり、それが国民の間で不信感を生んでいる。そうした状況を踏まえれば、政府が広告出稿をコントロールすることで、メディアの在り方に一定の影響を与えようとしている可能性も考えられる。
結局のところ、今回の決定が単なる一時的な措置なのか、それとも大きな変革の一歩なのかは、まだ分からない。ただ、少なくともこれまでのようにテレビ局が「特権的な立場」でいられる時代ではなくなりつつあることは間違いないだろう。メディア業界がこれまでのやり方を見直し、公平で信頼できる報道を目指すのであれば、政府との関係を見直すことも避けられないはずだ。
今後の動向を注視しつつ、日本のメディア環境がより公正で健全なものになることを期待したい。
執筆:編集部B