24日、石破総理は施政方針演説で、一人ひとりが自己実現できる「楽しい日本」を目指し、地方創生を核とする「令和の日本列島改造」を打ち出した。
石破総理は衆参両院の本会議で施政方針演説に臨み、「国づくりの基本軸」として、「今年は戦後80年、そして昭和の元号で百年に当たる節目の年であり、これまでの日本の歩みを振り返り、これからの新しい日本を考える年にする」と述べた。
さらに「かつて国家が主導した『強い日本』、企業が主導した『豊かな日本』、加えてこれからは一人一人が主導する『楽しい日本』を目指していきたい」と述べた。「楽しい日本」とは「すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、『今日より明日はよくなる』と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力ある国家」だという。
その上で「楽しい日本を実現するための政策の核心は、『地方創生2.0』であり、これを『令和の日本列島改造』として強力に進める」と述べた。
「令和の日本列島改造」には「若者や女性にも選ばれる地方」「産官学の地方移転と創生」「地方イノベーション創生構想」「新時代のインフラ整備」「広域リージョン連携」の5本の柱がある。
経済・財政・社会保障については「『賃上げこそが成長戦略の要』との認識の下、物価上昇に負けない賃上げを起点として、国民の皆様の所得と経済全体の生産性の向上を図っていく」と語り、「現在や将来の賃金の増加等を活かした資産形成の後押しも重要であり、NISAやiDeCoの充実など“資産運用立国”の取り組みを強化する」とした。
防災については「防災対応の司令塔として防災監を内閣府に設置するとともに、内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面から抜本的に強化する。その上で、防災庁を令和8年度中に設置するべく、準備を加速する」と述べた。
治安については「犯罪は長期的に減少傾向にあるが、多くの国民が治安の悪化を感じている。『闇バイト』による強盗・詐欺、巧妙なサイバー犯罪等が後を絶たず、女性が悪質ホストクラブに搾取される問題も生じている。犯罪対策を強力に推進し、『世界一安全な日本』を実現する。匿名・流動型犯罪グループに対し、仮装身分捜査等により検挙を徹底する。『闇バイト』の求人情報の削除の促進、SNS等での若者向けの注意喚起、防犯カメラの整備の支援等を進める」とした。
外交・安全保障については、中国・ロシアの軍事活動の活発化、北朝鮮による核・ミサイル開発に対し、「バランス・オブ・パワーに常に最大限の注意を払い、我が国自身の能力を高める、日米同盟を更なる高みに引き上げる、同志国との連携を更に拡大・深化する」と述べた。
また、自衛隊の人的基盤の強化については「自衛官が十分に充足されていないことは極めて深刻な課題だ。30を超える手当等の新設・金額の引上げなど過去に例のない取り組みを令和7年度から実現する。自衛官の処遇の魅力向上、若くして定年退職を迎える自衛官が退職後も活躍できる環境の創出等を内容とする法案を提出する」とした。
政治改革については「国費による助成、企業団体や個人からの資金、そして政治家本人からの支出、それらのバランスはどうあるべきか。国費による助成を受け、原則として非課税であるという特別な扱いを受ける以上、それにふさわしい政党や政治団体としての規律の在り方をどのように考え、また、その規律をどのように担保していくか。そのための法制度の在り方も含めて、与野党の枠を超えて議論を深めていきたい」と述べた。
憲法改正については「国民の意識や国際情勢の変化を踏まえ、国のかたちを定める憲法のあるべき姿について、主権者である国民の皆様に案を示すのは、我々国会議員の責務」とした。
(ABEMA NEWS)
[全文は引用元へ…]
【himuroさんの投稿】
引用元 https://times.abema.tv/articles/-/10160997?page=1
石破総理の施政方針演説は、これまでの日本の歩みを振り返りつつ、未来へ向けた新たなビジョンを示すものだった。「楽しい日本」というフレーズが印象的だが、果たしてこの理念がどこまで実現可能なのか、多くの国民が注目している。
「楽しい日本」とは、一人ひとりが夢を持ち、挑戦できる社会を目指すということだが、現実問題として、地方経済の衰退や若者の流出、高齢化の進行など、厳しい課題が山積している。石破総理はその解決策として「令和の日本列島改造」を掲げ、地方創生を柱に据えた。これはかつての高度経済成長期に行われた「日本列島改造論」を彷彿とさせるが、当時とは社会の状況が大きく異なる。人口減少が進む今、単なる地方への投資ではなく、持続可能な地域社会の構築が求められる。
「若者や女性にも選ばれる地方」として、地方への移住促進や働き方の多様化が挙げられているが、移住したいと思えるだけの魅力的な雇用機会や生活環境をどこまで整備できるのかが鍵となる。現状、地方のインフラ整備や医療体制の不備、賃金格差などが深刻な課題となっており、単に掛け声だけで解決できる問題ではない。地方創生の成功には、産官学の連携が不可欠だが、それをどのように実現するのか具体策が問われる。
経済政策に関しては、「賃上げこそが成長戦略の要」と強調している点は評価できる。長年のデフレ脱却に向けた動きの中で、賃上げを重視することは正しい方向性と言える。ただ、現実的には中小企業の多くが原材料費やエネルギーコストの高騰に苦しんでおり、政府の支援なしでは賃上げは難しい。特に、地方の中小企業に対して、どのような具体的支援策を講じるのかが注目される。また、資産形成の後押しとしてNISAやiDeCoの充実を図るとされているが、資産運用に慣れていない層への教育や支援も同時に進める必要があるだろう。
一方、防災については「防災監の設置」と「防災庁の新設」を掲げ、災害対応の強化を打ち出している。近年、日本は頻発する自然災害に見舞われており、これまでの対応の遅れや縦割り行政の弊害が指摘されてきた。防災庁の設置が具体的な効果を生むかどうかは、運用体制次第だが、迅速な対応を可能にするための予算や人員の確保が不可欠となる。
治安対策についても具体的な施策が示された。「闇バイト」やサイバー犯罪の増加に対し、仮装身分捜査の導入や防犯カメラの整備支援を進めるとしたが、実効性のある対策となるかどうかは慎重に見極める必要がある。治安悪化の背景には、貧困や社会的孤立などの問題が根底にあるため、単なる取り締まりの強化だけでは根本的な解決にはならない。SNSなどを通じた若者への啓発活動を強化し、犯罪の未然防止に力を入れるべきだ。
外交・安全保障については、中国やロシアの軍事的脅威、北朝鮮の核開発に対応するため、日米同盟の強化を柱に据えているのは妥当な判断だ。しかし、自衛隊の人員不足が深刻化している現状に対し、手当の増額や退職後のキャリア支援といった施策だけでどこまで人材を確保できるのか疑問も残る。国防の重要性を国民にしっかりと伝え、より根本的な魅力向上策を打ち出す必要がある。
政治改革についても言及があったが、資金の透明性や規律のあり方については、与野党の枠を超えた議論が必要とされる。特に、政党助成金の使途や政治資金の透明性をどこまで担保できるのか、国民の信頼を得るための具体策が求められる。
さらに、憲法改正についても踏み込んだ発言があった。「国民の意識や国際情勢の変化を踏まえ、憲法のあるべき姿を示す」との発言からは、今後の議論が本格化することを示唆している。安全保障環境が厳しさを増す中で、憲法改正が現実のものとなる可能性も高まっており、国民の理解を深めるための丁寧な議論が求められる。
今回の施政方針演説は、「楽しい日本」というキャッチフレーズを掲げながらも、具体的な課題に踏み込んだ内容となっている。しかし、その実現には多くの課題が立ちはだかるのは間違いない。地方創生、経済成長、治安維持、国防強化といった複数の目標を同時に達成するためには、国民一人ひとりの協力が不可欠だ。
政府が掲げるビジョンをどこまで具体化し、実行に移せるかが問われる1年となるだろう。国民としても、政府の政策をしっかりと見極め、必要な声を上げていくことが重要だ。
執筆:編集部A