政府・与党は、所得税が生じる「年収103万円の壁」の引き上げを巡り、150万円を上限に引き上げる方向で調整に入った。24日、政権幹部が明らかにした。国民民主党は178万円への引き上げを求めていたが、与党は昨年末に123万円を提示したため、両者の交渉は中断していた。国民民主の理解を得られるかが焦点となる。
国民民主は、与党が提案した引き上げ幅では不十分だと反発していた。
政府高官は産経新聞の取材に「引き上げは150万円以内だ」と述べた。別の与党幹部も「150万円までであれば、物価上昇率などで引き上げ根拠を説明できる」と語った。
石破茂首相は24日召集の通常国会に少数与党で臨まなければならない。国民民主に譲歩し、早期成立を目指す令和7年度予算案への賛成を引き出したい考えだ。
103万円の壁の引き上げを巡っては、国民民主が先の衆院選で訴えて躍進し、過半数を失った与党の自民、公明両党と協議を進めてきた。
昨年12月11日には3党の幹事長会談で「178万円を目指して来年(今年)から引き上げる」という内容の合意書を交わした。 だが、与党が国民民主に提示したのは123万円だったため、国民民主は強く反発し協議を打ち切った。3者は協議の継続自体は確認したが、今年に入ってからは目立った進展はなかった。 国民民主の玉木雄一郎代表(役職停止中)も今月15日のラジオ日本番組で、与党が国民民主との合意を履行した場合は予算案に「賛成する」と明言した。ただ、国民民主内にはあくまでも178万円を求める強硬論もあり、交渉が決裂する可能性もある。
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【Yahoo!ニュースさんの投稿】
引用元 https://news.yahoo.co.jp/articles/278e47508033b8b1ca6f479e0d543cacad6c2242
政府・与党が103万円の壁を150万円まで引き上げる方向で調整に入ったという報道を見て、ようやく少しは動いたかという印象を受けた。しかし、本当に150万円で十分なのかという疑問は残る。国民民主党は178万円への引き上げを求めており、そもそも昨年12月の段階で「178万円を目指して引き上げる」という合意があった。それにもかかわらず、与党側が123万円という数字を提示し、交渉が一時中断していた経緯を考えると、今回の150万円という案も「妥協の産物」に見えてしまう。
現在、103万円を超えると所得税がかかり、130万円を超えると社会保険の扶養から外れるため、働きたいのに労働時間を抑えざるを得ない人が多くいる。この「壁」を取り払うことで、労働時間の増加、ひいては労働力不足の解消につながると期待されている。確かに、150万円に引き上げれば多少の改善は見込めるが、果たしてそれで十分なのか。
与党が提示する150万円という数字の根拠は「物価上昇率などを考慮して説明できる範囲」というものだ。しかし、それが実際の生活にどこまで即しているかは疑問が残る。現在の物価上昇や生活費の増加を考えると、150万円では不十分と考える人も多い。特に、国民民主党が178万円を主張しているのは、より現実的な水準を見越してのものだろう。
政府は少子化対策や労働力不足の解消を掲げているが、今回の150万円案がそれにどこまで貢献するのかは不透明だ。そもそも、この問題は単なる「壁」の引き上げだけで解決するものではない。
一つのポイントとして、減税の必要性が挙げられる。年収の壁を上げても、実際に手取りが増えるかどうかは、税金や社会保険料の負担次第だ。仮に150万円の壁を設けても、税率が上がれば、結局は「働き損」と感じる人が増える可能性もある。減税とセットでなければ、労働時間を増やすインセンティブにはなりにくい。
もう一つの問題は、政府がどこまで本気でこの改革を進めるつもりなのかという点だ。今回の引き上げ案は、少数与党となった自民・公明両党が国民民主党の協力を得るための「取引材料」として提示されたものとも言える。令和7年度予算案への賛成を得るために、国民民主党への譲歩が必要だったというのが背景にある。つまり、政治的な駆け引きの結果として出てきた150万円案であり、本当に国民の生活を第一に考えたものなのかは疑問が残る。
また、今後の交渉次第では、150万円案すら実現しない可能性もある。国民民主党の玉木雄一郎代表(現在役職停止中)は、与党が合意を履行すれば予算案に賛成するとしているが、党内では「178万円でなければ意味がない」という強硬意見も根強い。このままでは、交渉が決裂する可能性もある。
一部では、「どうせ引き上げるなら200万円まで上げるべきだ」という意見も出ている。確かに、それくらいの水準でなければ、現実的に「壁」を意識せずに働けるようにはならない。しかし、政府側は財源の問題を理由に慎重な姿勢を崩していない。150万円案ですら苦労している現状を考えると、200万円への引き上げはかなりハードルが高いだろう。
では、最終的にどのような形が望ましいのか。
現実的には、まず178万円への引き上げを実現し、同時に所得税の減税や社会保険料の負担軽減策を導入することが必要だろう。単に壁を上げるだけでは、課税による手取りの減少という新たな問題が生じる。これでは、労働意欲の向上にはつながらない。むしろ、減税をセットにすることで、より多くの人が積極的に働ける環境を整えるべきではないか。
政府は「労働力不足の解消」を目的の一つに掲げているが、本気でそれを実現したいなら、今回の150万円案では不十分だろう。国民民主党の主張する178万円案の方が現実的であり、少なくともそこを目標に交渉を進めるべきではないか。
この問題は単なる税制の変更にとどまらず、日本の労働市場全体に関わる重要な課題である。政府・与党は、中途半端な妥協ではなく、将来を見据えた改革を進めるべきだ。
執筆:編集部B