「こども未来戦略」に基づくこども・子育て政策強化の本格実施に向け、こども家庭庁は一般会計に4兆2367億円、子ども・子育て支援特別会計に3兆903億円を計上し、全体で7兆3270億円となった。厚生労働省が予算計上していた育児休業等給付関係の移管に伴う増加分を除いた実質ベースで前年度比1兆1063億円増えた。
保育の質向上には計1933億円を盛った。こども6人に対して保育士1人から、5人に対して1人へと改善を進める方針を示していた1歳児の保育士配置については基準を見直さず、加算措置を設ける。ICT(情報通信技術)導入、職員の平均経験年数が10年以上など職場環境の改善を進めている保育所が、保育士配置を5対1に改善した場合、人件費相当分を加算することを想定する。
保護者の就労を問わず、保育施設を一定時間利用できる「こども誰でも通園制度」は2025年度に制度化。月10時間を上限に補助し、こども1人1時間当たりの補助単価は0歳児1300円、1歳児1100円、2歳児900円と年齢ごとに設定。今年度実施している試行事業の補助単価は全年齢一律で850円となっており、保育現場からは補助額の充実を求める声が上がっていた。
児童虐待防止や社会的養護には計4033億円を計上。こども家庭庁は26年度までの2年間で、児童相談所で対応にあたる児童福祉司を910人程度増員する目標を掲げ、心理職によるメンタルケアやデジタル技術の導入支援に着手するなど職員定着や業務効率化を進める。また、児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設の人材確保、定着に向けた取り組みを強化する。
このほか、仕事と子育ての両立支援にも力を入れ、育児のために時短勤務を選択した場合の新たな給付制度などを創設。児童手当には2兆1666億円を計上し、所得制限撤廃などの抜本的な拡充を図る。
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【福祉新聞さんの投稿】
引用元 https://fukushishimbun.com/jinzai/38520
こども未来戦略に基づく「こども・子育て政策強化」が本格的に実施されることになり、政府は巨額の予算を投入する方針を示している。その総額は7兆円を超える規模となり、これにより保育の質向上や児童虐待防止、仕事と子育ての両立支援など、さまざまな施策が推進されるという。しかし、この莫大な予算が本当に有効に活用されるのか、多くの疑問が残る。
まず、保育の質向上について考えてみたい。今回の予算では、保育士の配置基準について、1歳児を6人に対して1人という現状から、5人に1人に改善するとしている。しかし、これはあくまで加算措置を設けるだけで、基準自体は見直されないようだ。つまり、保育の現場において根本的な改革が行われるわけではなく、一定の条件を満たした施設に限り、追加の支援が受けられる仕組みとなっている。こうしたやり方が、本当にすべての保育所にとって有益なのかは疑問だ。
次に、「こども誰でも通園制度」についても考察してみたい。この制度は、保護者の就労状況に関係なく、一定時間保育施設を利用できるというもので、一見すると魅力的な制度に思える。しかし、現状の試行事業では補助単価が低く、現場からはさらなる支援を求める声が上がっている。政府は補助単価を年齢別に引き上げる方針を示しているものの、現実問題として、保育施設の受け入れ体制が十分でない限り、この制度の恩恵を受けることができるのは一部の家庭に限られるだろう。結果として、制度の目的が形骸化する可能性がある。
さらに、児童虐待防止や社会的養護についても触れてみたい。今回の予算では、児童相談所の職員増員やメンタルケアの強化が計画されている。確かに、児童虐待の問題は深刻であり、職員の負担を軽減し、対応力を強化することは重要だ。しかし、このような人員増強策が、虐待の根本的な解決につながるのかは不透明だ。単に職員数を増やすだけでは、問題の本質にアプローチできない可能性もある。虐待の背景には、親の経済的困難や社会的孤立があるため、根本的な支援策の充実が求められる。
また、仕事と子育ての両立支援についても、今回の施策のひとつとして挙げられている。特に、育児のための時短勤務を選択した場合の新たな給付制度が創設されるとのことだ。しかし、こうした制度がどこまで実際の負担軽減につながるのかは未知数だ。時短勤務を選択したくても、職場の理解が得られない場合や、経済的に困難な状況では、利用したくてもできないケースも少なくない。制度の創設だけでなく、それを活用できる環境づくりも併せて進めるべきではないか。
児童手当の拡充についても、所得制限の撤廃が話題になっているが、果たしてこれが少子化対策としてどれほどの効果を持つのか疑問だ。児童手当の金額が増えたとしても、根本的な生活コストの上昇に対しては不十分な面が多い。教育費や住宅費など、子育てにかかる費用全体を見直し、より実効性のある支援が求められる。
このように、こども・子育て政策の強化には多くの課題がある。7兆円を超える巨額の予算を投入する以上、それが本当に効果を発揮するのか、国民として注視していく必要がある。予算の使い道が不透明なままでは、ただの税金の浪費になりかねない。特に、少子化が進む現状を考えると、将来を見据えた持続可能な政策が求められるはずだ。
政府は、政策を実施するだけで満足するのではなく、現場の声をしっかりと聞き、制度の見直しを柔軟に行うことが重要だろう。最終的には、国民が実感できる形での支援がなされなければ、いくら予算を増やしても無駄に終わる可能性がある。
執筆:編集部A
以下X(旧Twitter)より…