インターネット上で偽・誤情報が蔓延し、誹謗中傷による被害が深刻化する中、総務省は22日、交流サイト(SNS)や通信事業者、業界団体などと連携して利用者のITリテラシーの向上を目指す官民プロジェクト「デジタル ポジティブ アクション」を発表した。ITリテラシーに関する普及啓発活動を実施し、サービス事業者に自発的な対応を促す。
プロジェクトには、X(旧ツイッター)やフェイスブック(FB)、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などのSNS運営会社、グーグルや日本マイクロソフト、LINEヤフーなどのIT大手、携帯電話大手など19の事業者が参画。同日、ITリテラシーを啓発するウェブサイトを開設した。事業者に対し、利用者が誤った情報や偏った情報に左右されずに安心して使えるサービス設計など、自発的な対応を促すという。
プロジェクトリーダーを務める慶応大大学院の山本龍彦教授は「インターネットでの有害情報の流通が、私たちの生命、身体、財産、さらには民主主義そのものにリアルな影響を与えると認識されている」と警鐘を鳴らしたうえで、「クリックを得られる扇情的な情報が経済的な利益を生んでいる。私たちの意識が変容しないといけない」と呼び掛けた。
インターネットではクリック数が直接的な利益に結び付くため、情報の質よりも人々の関心や注目を集めようとする事業者や個人が無数に存在する。過去の検索結果を学習したアルゴリズムが関心の強いものばかりを表示し、価値観が偏る「フィルターバブル」や、自分と考えの近い人同士がSNSで交流し、価値観が固定化する「エコーチェンバー」が深刻化している。
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【産経ニュースさんの投稿】
引用元 https://www.sankei.com/article/20250122-SSLXERUM3JBWJEQRBBUEXXDNEY/
近年、インターネット上での誹謗中傷や偽情報の拡散が深刻な社会問題となっている中、総務省が発表した官民連携プロジェクト「デジタル ポジティブ アクション」は、こうした問題に対処するための重要な取り組みだと感じる。X(旧ツイッター)、LINEヤフー、グーグルなどの大手IT企業が参画し、ITリテラシーの向上を目指すという点は評価できるが、実効性については疑問も残る。
私自身も、SNSを利用する中で、根拠のない情報や一方的な意見が広まり、それが事実として扱われる現状を何度も目にしてきた。特に、センセーショナルな内容ほど拡散されやすく、事実確認が後回しになってしまう傾向が強い。このような状況を改善するには、利用者自身のリテラシー向上はもちろん、プラットフォーム側の積極的な関与も不可欠だ。
今回のプロジェクトは、事業者に「自発的な対応」を促すとしているが、果たしてそれだけで十分なのだろうか。各SNS運営会社は、これまでも誹謗中傷やデマ拡散への対応を表明してきたものの、根本的な解決には至っていないのが現状だ。なぜなら、インターネットの仕組みそのものが、ユーザーの興味を引く情報を優先的に表示するよう設計されているからだ。
特に、記事内で言及されている「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」は、現代の情報環境において深刻な問題だと感じる。SNSや検索エンジンのアルゴリズムは、ユーザーの過去の検索履歴や閲覧傾向を学習し、関心のある情報ばかりを提示する。このため、異なる意見に触れる機会が減少し、結果的に偏った考え方が形成されやすくなる。こうした状況が、社会の分断を生み、誤った情報の拡散に拍車をかけているのだ。
また、情報の発信者にも問題がある。近年、個人でも簡単に情報を発信できるようになった一方で、クリック数を稼ぐために扇情的な内容を意図的に拡散する事例が増えている。特に、ニュースサイトやインフルエンサーが注目を集めるために過激な見出しをつけ、事実よりも感情に訴える手法が横行している。これでは、正確な情報が埋もれてしまい、健全な議論が成立しにくくなってしまう。
このような現状を踏まえると、「デジタル ポジティブ アクション」が掲げる「利用者のITリテラシー向上」という方針は重要である一方で、それだけでは限界があるとも感じる。より実効性を持たせるためには、次のような取り組みが必要ではないだろうか。
まず、プラットフォーム側が積極的にアルゴリズムの透明性を高め、ユーザーに対してどのような基準で情報が表示されるのかを明示するべきだ。現状では、どのように情報が選別され、何が優先されているのかが不透明なため、利用者は無意識のうちに偏った情報に囲まれてしまう。
次に、誤情報や誹謗中傷に対する法的な規制を強化することも一つの手段だ。特に、悪意を持って虚偽情報を発信する行為に対しては、厳格なペナルティを設けることで抑止力が働くはずだ。しかし、言論の自由とのバランスを取る必要があり、一方的な規制にならないよう、慎重な議論が求められる。
さらに、学校教育において、情報リテラシー教育をより充実させることが重要だ。子どもたちが早い段階から情報の真偽を見極める力を身につけることで、将来的に健全なインターネット利用が促進されるはずだ。
また、マスメディアの役割も見逃せない。SNSばかりが誹謗中傷の温床とされがちだが、実際にはテレビや新聞などのメディアも影響力が大きく、誤った報道や偏向報道がSNS以上に社会に与える影響は計り知れない。メディアに対しても、公平で正確な報道を求める声を強める必要がある。
今回のプロジェクトが単なる啓発活動に終わらず、実際の運用にどこまで踏み込めるのかが、今後の課題だろう。SNSの利用はもはや日常生活の一部となっており、完全に規制することは現実的ではない。しかし、適切なルールのもとで、より健全な情報環境を整備することは可能だ。
私たち一人ひとりが、SNSやネットニュースに接する際、常に「この情報は本当に正しいのか?」と自問自答し、冷静に判断することが求められている。インターネットの利便性を享受しつつ、責任ある利用を心がけることが、より良い社会の実現につながるのではないかと感じる。
執筆: 編集部A
以下X(旧Twitter)より…