石破茂首相は、岩盤保守層が強く警戒する一方、一部野党が声高に叫ぶ「選択的夫婦別姓」について、自民党の見解を早期に取りまとめる意向を示した。昨年10月の衆院選で惨敗して少数与党に転落した石破政権は、同制度を審議する衆院法務委員会や予算委員会のトップを立憲民主党に譲った。24日召集の通常国会では、新年度予算という「関門」に臨むが、まさか予算案と選択的夫婦別姓を「取り引き」するつもりなのか。国民が熱望する「減税」は放置したままで、「政権居座り」の画策を続ける〝危うい兆候〟が浮き彫りになってきた。
「濃密な議論を早急に行い自民として決めるよう党にお願いしたい。時間はあまり残されていない」「公明党との間で意見の一致をみたい」
石破首相は19日のNHK番組で、選択的夫婦別姓に関する自民党見解の取りまとめを急ぎ、斉藤鉄夫代表率いる公明党とともに、与党案として野党に示す意向を示した。
石破首相は「選択的夫婦別姓を導入する場合のメリットとデメリットを確認したい」と、課題の洗い出しも強調した。国民の手取りを増やす「年収103万円の壁」の引き上げをめぐり、国民民主党と「178万円引き上げ」で合意しながら議論を引き延ばすのとは対照的に、選択的夫婦別姓では機敏な対応をみせている。
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【こちら夕刊フジ編集局さんの投稿】
引用元 https://www.zakzak.co.jp/article/20250120-CHNJSCDEBRJINP5OHAD5LA2HTU/
選択的夫婦別姓の問題が再び国会で議論の中心に据えられることになったが、その進め方には多くの疑問が残る。特に、現在の日本の経済状況や国民生活の実態を考えれば、優先すべき課題は他にあるのではないかという声が多いのは当然だろう。石破首相は、「時間がない」と発言し、急ぎ自民党内での意見集約を進める考えを示しているが、果たして国民が本当にそれを求めているのか疑問に思う。
現行の夫婦同姓制度は、長い歴史の中で日本社会に根付いており、家族の一体感や子供のアイデンティティを守る上で重要な役割を果たしてきた。そのため、安易に変更を加えることが家族制度の根幹を揺るがしかねないという懸念は、決して軽視すべきではない。内閣府の調査によると、「旧姓を通称として使用する制度の拡大」を望む声が42%と最も多く、必ずしも別姓制度の導入を求める声が主流とは言い難い。このような状況で、急いで制度を変更しようとする動きには慎重な姿勢が求められる。
さらに、政府が本当に力を入れるべき政策は、家計の負担を軽減する経済対策ではないだろうか。例えば、長年放置されてきた「年収103万円の壁」の問題は、パートやアルバイトで生計を立てる家庭にとって切実な課題であり、国民民主党との「178万円引き上げ」の合意にもかかわらず、依然として議論が進展していない。選択的夫婦別姓のような社会制度の改革も重要かもしれないが、まずは生活に直結する課題を優先すべきである。
今回の夫婦別姓の議論が政局の道具として利用されることも懸念される。昨年の衆院選で与党が過半数割れしたことで、立憲民主党などの野党が法務委員会や予算委員会のトップに立つことになり、自民党は彼らとの協調なしに政策を進めることが難しくなった。そのため、予算案成立のための「取引材料」として夫婦別姓を利用しようとしているのではないかという見方も根強い。こうした状況は、政策の本質よりも政局の駆け引きが優先されているように見えてしまう。
また、選択的夫婦別姓をめぐる議論では、家族の在り方が大きく変わる可能性についても十分な考慮が必要だ。夫婦別姓が導入されると、兄弟間で名字が異なるケースが増え、家族の結びつきが希薄になるとの懸念が指摘されている。特に、子供の姓をどうするかという問題は、家庭内の争いを招く恐れもあり、単純な「選択制」として片付けることは難しい問題である。
一方で、選択的夫婦別姓の導入を求める声があるのも事実だ。仕事や社会生活において、旧姓を通称として使用することが可能になってはいるものの、依然として不便を感じる場面もあるという意見も聞かれる。特に女性の社会進出が進む中で、旧姓を継続して使用できる選択肢があることは、キャリア形成の観点から一定のメリットがあるとも言える。ただし、その議論はあくまで冷静かつ慎重に行われるべきであり、拙速な法改正が逆に新たな混乱を生む可能性も考慮すべきだ。
さらに、公明党との調整も今後の課題として浮上している。公明党はこれまで夫婦別姓に対して比較的柔軟な姿勢を示してきたが、党内の保守層からの反発をどう抑えるかが焦点となるだろう。与党内の足並みが揃わなければ、野党との交渉も難航し、結局は国会審議が停滞する可能性がある。
最終的に、選択的夫婦別姓の導入に関する議論は、経済政策や社会保障と同じくらい、慎重に取り組まなければならないテーマである。現在のように、政局の道具として利用されるべきではなく、国民の幅広い意見を尊重し、冷静かつ長期的な視点で検討されるべきだ。
現時点で国民の間に十分な理解が得られているとは言えない以上、拙速な導入は避けるべきであり、引き続き慎重な議論が求められるだろう。政府には、国民生活に直結する経済政策を最優先し、夫婦別姓については、丁寧に国民の声を聞きながら進める姿勢を取ってほしい。
執筆:編集部A