2025年が始まりました。米国経済も中国経済も特に明るい材料は見当たりません。米国では、1月20日にいよいよトランプ氏が大統領に再任します。大統領選挙での勝因を考慮すれば、不法移民に対する規制強化とインフレ対策が重要な政策の柱になるはずです。しかし、選挙公約に掲げた関税率の引き上げを実施すれば、インフレをさらに高じさせることが懸念されます。
同氏は大統領選の過程で、「インフレを悪化させた」とバイデン政権をさんざん攻撃しました。この攻撃と矛盾する行動を取ることになりそうです。それでも、同氏に対する支持は変わらず続くでしょう。そう考える理由の一つは、新型コロナウイルス感染症がまん延した時の米世論の反応です。トランプ政権はマスク着用を奨励することなく、共和党支持者を中心に感染被害が広がり、多くの人々が命を落としました。それでも、それによってトランプ大統領の支持率が下がり政権が危機に陥ることはありませんでした。
トランプ政権は、中国との競争を強く意識した政策運営をすることが予想されています。だからといって日本に対し好意的な姿勢を見せるとは限りません。例えば、日本製鉄によるUSスチール買収について「私は完全に反対だ」と表明しています。また、日本からの輸入品に対する関税引き上げ、米軍の費用肩代わりのための日本の防衛予算大幅引き上げなども懸念されています。米国頼みの経済安全保障やビジネス拡大といったバランスを欠いた通商政策やビジネス戦略は見直しを迫られています。
中国経済もぱっとしない状況が続きそうです。2024年1~11月の経済指標を見ると、企業の設備投資は前年同期比9.3%増(23年通年は同6.5%増)と堅調であるものの、インフラ投資の伸びは同4.2%増(23年通年は同5.9%増)と鈍化しています。不動産投資は同10.4%減(23年通年は9.6%減)と大幅な前年割れ。しかもマイナス幅は依然として拡大傾向が続いています。
輸出は、輸出数量の高い伸びが続いており、10月は前年同月比17.3%増、11月も同11.6%増と数量ベースで2桁の伸びを示しています。しかし、過剰生産によって生じた過剰在庫を輸出に振り向けることで高い伸びとなっていることを考慮すれば、輸出向け増産のための新たな設備投資を誘発する好循環は生じにくいと考えられます。
24年12月に行われた中央経済工作会議*でも目新しい施策は出ませんでした。これは、24年9月下旬から11月上旬にかけて、金融財政両面における景気刺激策を発表したばかりであることが背景にあると思われます。加えて、トランプ政権発足後の対中関税引き上げ策などの具体的な政策内容を見極めたうえで、本年の政策方針を固めようとしているのではないかとの指摘もあります。
*=経済政策における翌年の大きな方針を決める会議
このように米中とも不透明かつ不安定なグローバル経済情勢において、日本は自力で経済の回復を図る必要があります。そのための具体策として以下の3つを提案します。
第1は情報収集力を向上させることです。例えば、中国経済の現状について、経営トップをはじめとする実権を持つ人々が中国を訪れ、現状を正しく認識する。現在は、中国リスクをめぐるネガティブな情報に過剰に反応して、投資判断において過度に慎重になっていると考えます。それゆえ、ビジネスチャンスを自ら失っている。
中国市場の構造は複雑かつ多様で、産業分野、地域、所得階層によって大きく異なります。マクロ経済情勢は当面厳しい停滞が続くとは言え、それでも中国市場の規模は巨大であり、日米欧先進国の経済成長率に比べると高い成長が続く見通しです。多様な購買層のニーズを的確に捉える製品を開発し、的確な販売戦略で販売ルートを確保すればビジネスチャンスは確実に広がります。マクロ経済動向と自社製品の販売市場の動向は別物と考えるべきです。その事実は、現地に足を運んで自分の目で見なければ理解できません。
[全文は引用元へ…]
【kakikoSHOPさんの投稿】
引用元 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/011000449/?n_cid=nbponb_twbn
中国専門家の瀬口氏が「日本企業は今こそ中国若手人材の活用を」と提言したことについて、改めて考えてみるべき点が多い。2025年に向けて、米国と中国の経済がいずれも不確実性を増していることは周知の事実であり、日本経済もその影響を避けて通ることはできない。そのため、企業の競争力を高めるための対策が求められているのは間違いない。
瀬口氏は、日本政府が配偶者控除の撤廃を進め、女性の就労を促進すべきだと指摘している。確かに、少子高齢化が進む日本では、労働力の確保が喫緊の課題となっている。配偶者控除の撤廃により、女性がより積極的に労働市場へ参入することが期待されるが、同時に企業側の受け入れ態勢が整っているかどうかも重要なポイントだ。単に政策を変更するだけではなく、企業が女性が働きやすい環境を整備し、柔軟な働き方を推進することが必要となる。
さらに、日本企業は情報収集力の強化と、中国人材の確保を進めるべきだと強調されている。これに関しては、賛否が分かれる部分もあるだろう。確かに、中国市場の成長は目覚ましく、優秀な人材が豊富に存在する。しかし、その一方で、中国国内の政治的リスクや、ビジネス環境の変化に対する不安も無視できない。特に、近年の米中関係の悪化や、中国政府の規制強化などが、日本企業にとってのリスク要因として懸念されるところだ。
日本企業が中国人材を活用することには、いくつかのメリットがある。まず、現地市場の理解が深まり、文化的なギャップを埋めることができる。さらに、言語や商習慣の違いによるコミュニケーションの課題も軽減されるだろう。しかし、その一方で、日本企業の企業文化にどれだけ適応できるのか、また、長期的な視点でどのような成果を生むのかを見極めることが重要だ。
また、日本国内の労働市場を考慮すると、中国人材の活用だけに頼るのではなく、国内の人材育成を並行して進める必要がある。特に、若年層の雇用を拡大し、デジタル技術やグローバルビジネスに対応できる人材を育成することが、持続的な成長につながるのではないだろうか。
瀬口氏の提言には、日本企業の現状に対する危機感がにじみ出ている。グローバル競争が激化する中で、他国の優秀な人材を取り込むことは、企業の生き残り戦略の一つとして有効かもしれない。しかし、企業が中国人材を積極的に採用することで、社内のコミュニケーションやマネジメントに新たな課題が生じる可能性もある。例えば、価値観の違いや、ビジネススタイルのギャップをどのように克服するのかが課題となるだろう。
一方で、政府が女性の就労を促進するという方針は、国内経済にとっても大きな意味を持つ。女性が積極的に働ける環境が整えば、労働力の確保だけでなく、社会全体の生産性向上にも寄与するはずだ。ただし、配偶者控除の撤廃だけでは十分ではなく、保育施設の充実や、キャリア支援制度の整備が不可欠となる。
日本企業は今後、国内外の人材をどのようにバランスよく活用していくかが、成長の鍵となるだろう。単に外国人材を受け入れるだけではなく、既存の社員との協力体制を構築し、組織全体の強化を図ることが求められている。そのためには、経営戦略の見直しや、異文化マネジメントの強化が不可欠となる。
日本はこれまで、長年にわたり国内市場に依存した経済構造を築いてきたが、今やグローバル市場での競争力を高めることが不可欠な時代となった。企業はこれまで以上に柔軟な対応が求められ、異なる価値観を受け入れながら、自社の強みを活かす工夫が必要だ。
これからの日本企業が成長していくためには、単なる人材確保にとどまらず、経営の在り方そのものを変えていく必要がある。中国人材の活用はその一つの選択肢に過ぎず、最終的には国内の労働市場の活性化が最も重要な課題となるだろう。
今後の日本企業がどのように変化していくのか、また政府がどのような政策を打ち出していくのかが注目される。企業も政府も、グローバル化の波に対応しながら、国内の活力をどう維持していくかを真剣に考える必要がある。
執筆:編集部A
以下X(旧Twitter)より…