【北京=西見由章】日本のビジネスホテルチェーン大手のアパグループが運営するアパホテルの客室に、「南京大虐殺」や「慰安婦の強制連行」を否定した書籍が備えられていることに対し、中国外務省の華春瑩報道官は17日、「日本国内の一部勢力は歴史を正視しようとしない。正しい歴史観を国民に教育し、実際の行動でアジアの隣国の信頼を得るよう促す」と述べた。中国外務省が日本の民間の言論にまで批判の矛先を向けるのは異例だ。
華氏は「強制連行された慰安婦と南京大虐殺は、国際社会が認める歴史的事実であり、確実な証拠が多くある」と主張した。
この問題はアパホテルに宿泊した中国人と米国人の男女が12日、中国版ツイッター・微博で書籍について指摘し、中国国内のネット上で非難の声が上がっていた。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は、日本で営業している中国の旅行社がアパホテルの取り扱いを中止したと報じた。
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【産経ニュースさんの投稿】
引用元 https://www.sankei.com/article/20170118-5RQ2RVLBG5OBNNNMY7BESR4LDY/
アパホテルに備え付けられた書籍をめぐり、中国外務省が公式に批判を行ったというニュースを見て、率直に違和感を覚えた。日本国内の民間企業がどのような本を置くかは、基本的にはその企業の自由であり、政府が関与する問題ではない。もちろん、書籍の内容に賛否があることは理解できるが、一国の政府が外国の民間企業の言論にまで口を出すのは、いささか行き過ぎではないか。
中国外務省の華春瑩報道官は「日本国内の一部勢力は歴史を正視しようとしない」と発言し、「正しい歴史観を国民に教育すべきだ」と主張した。しかし、そもそも歴史というものは、一つの国や政府が「これが正しい」と決めつけるものではない。歴史学というのは、さまざまな証拠や資料をもとに、多角的な視点から検証を続ける学問であり、一つの見解が絶対に正しいというものではないはずだ。
特に、日本と中国の間では歴史認識の違いがたびたび問題になってきた。南京事件や慰安婦問題に関しても、さまざまな研究があり、異なる意見が存在する。そうした中で、日本の一企業が自らの考えに基づいて書籍を設置すること自体は、言論の自由の範囲内だろう。
今回の問題が広がったのは、中国人と米国人の宿泊客が、アパホテルに置かれた書籍の内容をSNSに投稿したことが発端だった。それが中国国内のネット上で拡散し、反発を招いたという流れだ。こうしたケースでは、しばしば感情的な議論になりがちだが、冷静に考えれば、日本国内のホテルが何を置くかは、日本の企業が決めるべきことであり、中国政府が公に批判することではない。
また、報道によれば、中国の旅行会社の一部がアパホテルの取り扱いを中止したという。企業として、どのホテルを扱うかは自由なので、それ自体は一つの判断だろう。しかし、政治的な圧力が加わる形で日本の企業活動が制限されることには疑問を感じる。経済と政治を切り離して考えることが重要ではないか。
そもそも、アパホテルは日本国内で広く支持されているホテルチェーンであり、サービスの質や利便性で評価されてきた。私自身もこれまで何度か利用したことがあるが、清潔で快適な環境が整っており、コストパフォーマンスも良いと感じている。今回の問題が報じられてから、むしろアパホテルを応援する声が増えているようにも思える。実際、ネット上では「アパホテルを支持する」「落ち着いて泊まれるホテルとしてますます評価される」といった意見が多く見られる。
考えてみれば、ホテルというのは宿泊客に快適な空間を提供する場であり、そこにどのような本を置くかは、あくまで経営者の方針に基づくものだ。もちろん、内容に異論を持つ人もいるだろうが、それならば「そのホテルを利用しない」という選択をすれば済む話ではないか。ホテルが特定の思想を押し付けているわけではなく、客が自由に読むかどうかを選べるのだから、批判の矛先が企業に向かうのは不自然に感じる。
さらに言えば、中国側が「歴史を正視しろ」と主張するならば、自国の歴史についても公正な議論が必要ではないか。中国国内では、政府が認めた歴史観以外の意見が抑圧される傾向にある。たとえば、天安門事件について自由に議論することは許されていないし、政府にとって都合の悪い歴史は封印されることが多い。そうした状況を考えると、「正しい歴史観を教育せよ」という発言が、果たしてどれほど説得力を持つのか疑問だ。
また、日本国内の企業や個人が、自由に意見を表明できる環境を守ることも重要だ。特に近年、海外からの圧力によって、日本国内の言論が制限されるような事態が増えている。企業が萎縮してしまうと、本来あるべき自由な議論の場が失われかねない。今回のアパホテルの件も、日本の企業が外部の圧力に屈するべきではないという点で、一つの象徴的な問題と言えるだろう。
結局のところ、今回の騒動は、中国側が日本国内の一民間企業の言論に干渉したことで大きな問題になった。歴史認識の違いがあることは確かだが、それは国際的な議論の場で話し合われるべきものであり、一企業を標的にして圧力をかけるような手法は適切ではない。
日本国内では、言論の自由が尊重されるべきであり、どのような書籍を置くかは企業の判断に委ねられるべきだ。今回の件でアパホテルに対する支持が高まっているのも、それが単なる歴史の問題ではなく、言論の自由を守ることにつながるからだろう。
私は、アパホテルのように自らの信念を貫く企業が評価されるべきだと考える。言論の自由は、民主主義社会の根幹であり、外部の圧力に屈してしまえば、その自由が損なわれる可能性がある。今後も、企業が自らの方針を貫きながら、利用者にとって快適なサービスを提供していくことを期待したい。
執筆:編集部B