昨年の風力発電の新設容量は目標の半分未満
ヨーロッパで風力発電の普及が足踏みしている。風力発電の業界団体ウインドヨーロッパが1月10日にリリースした資料によると、欧州連合(EU)域内で2024年に新設された風力発電の設備容量は約13ギガワットと、目標となる30ギガワットを大きく下回った。うち陸上風力が11.4ギガワットであり、洋上風力が1.4ギガワットという。
EUの執行部局である欧州委員会は、2023年に定めた行動計画で、30年までに風力発電の能力を、当時の204ギガワットから500ギガワットまで引き上げる必要があるとの試算を示した。この目標を達成するためには、風力発電を年間40ギガワット程度も新設する必要があるが、24年の実績はその半分にも満たなかったということになる。
ウインドヨーロッパは風力発電の普及が足踏みしている理由として、EUの定めた風力発電の新たな許認可ルールの各国での適用が遅れていること、送配電網の整備が遅れていること、電化そのものが遅れていること、の三点を挙げている。つまり、こうした阻害要因を取り除かなければ、風力発電の普及は計画通りには進まないというわけだ。
つまり、ウインドヨーロッパは、こうした阻害要因を取り除くための公的な支援を訴えているわけである。見方を変えると、欧州委員会は野心的な目標を掲げているにもかかわらず、風力発電の事業者に対して適切な支援を施していないわけだ。同時に、そうした支援がなければ、風力発電の普及がスピードアップなどしない現実も浮き彫りになる。
2035年までの新車の100%ZEV化(走行時に温室効果ガスを排出しない自動車、現実的には電気自動車であるEVを意味する)にも共通するところだが、欧州委員会には、極めて野心的な戦略目標を掲げる一方で、その実現のための戦術が甘いという特徴がある。実績の積み重ねより、高い目標にまずは参加者を誘導することを重視するためだ。
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【福岡在住ソシオさんの投稿】
引用元 https://www.smartnews.com/ja-jp/article/4770812890548540480?placement=article-preview-social&utm_campaign=sn_lid%3A4770812890548540480%7Csn_channel%3Acr_ja_top&utm_source=share_ios_twitter&share_id=9oKl8Q
ヨーロッパの「脱炭素」政策の象徴である風力発電の普及が、目標とは裏腹に足踏みしている現状を知り、やはり理想だけでエネルギー政策は成り立たないのだと強く感じました。特に、ドイツが原発を全廃し、再生可能エネルギーへの依存度を高めてきたことが、今のエネルギー不安と経済への負担を招いている現状は、極めて深刻だと思います。
2024年にEU域内で新設された風力発電の設備容量が目標の半分にも満たない13ギガワットという数字には驚きました。これは、目標達成に必要な年間40ギガワットの新設に対して、あまりにも遅れています。許認可の遅れや送配電網の整備不足、電化の遅れが原因とされていますが、そもそもEUの目標設定自体が現実離れしていたのではないかと思います。
特にドイツの風力発電への批判は目立ちます。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が「全ての風力発電を撤去する」という極端な公約を掲げたことは驚きですが、それが一定の支持を得ていることもまた、国民の間に風力発電への不信感が根強くあることを示しています。ドイツでは風力発電が電源構成の約27%を占めているにもかかわらず、その存在が逆風を受けているのです。
この背景には、環境保護を掲げながらも、風力発電設置による自然破壊や騒音問題、景観の悪化などが地域住民の生活に直接影響を与えている現実があります。「森を取り戻す」というAfDの主張に共感する人々が増えているのも、その証拠でしょう。再生可能エネルギーが「クリーン」であるというイメージだけが先行し、その負の側面に対する配慮が欠けていたのだと思います。
また、ドイツを含むEU全体でエネルギー価格が高騰していることも、国民の不満を高める大きな要因です。2024年のEU家庭用電力料金が2021年より約3割も高くなっている現実は、生活に直結する問題です。ロシア産ガスの供給停止による影響もありますが、再生可能エネルギーへの急激な転換がコストを押し上げた側面も否定できません。ウインドヨーロッパは「風力発電のコストは安い」と主張しますが、実際には化石燃料や原子力と比べて割高であるのが実情です。
EUの政策の特徴として、「高い目標を掲げるが、その実現のための戦略が甘い」という点がよく指摘されます。これは、2035年までの自動車の100%ZEV化(電気自動車の完全移行)にも共通する問題です。目標が高すぎて、実現可能性が乏しいまま突き進んでいる印象を受けます。目標を掲げるのは重要ですが、そのための具体的かつ現実的な計画と支援がなければ、絵に描いた餅になってしまいます。
財政規律を重視するEUが、風力発電の普及のために大規模な財政出動を行うとは考えにくく、結局は目標未達のままうやむやにされるのではないかという懸念もあります。右派の台頭や反EUの流れも、風力発電推進に対する逆風となっており、EUのエネルギー政策は大きな岐路に立たされているように見えます。
さらに、風力発電機がすでに設置しやすい場所には設置し尽くされているという現実も無視できません。自然環境や住民の生活に配慮しながら、これ以上の拡大を目指すのは非常に困難です。設置場所の確保や送電インフラの整備には莫大なコストと時間がかかります。加えて、地元住民の反発も無視できない問題です。
これらの現状を踏まえると、やはり安定した電力供給を維持するためには、原子力発電の再評価が必要なのではないかと考えます。脱原発を進めたドイツのエネルギー政策がうまくいっていないことは明らかです。環境負荷の少ない原子力発電は、再生可能エネルギーの不安定さを補完する重要な電源であるはずです。
日本も同様に、エネルギー政策を見直す必要があります。再生可能エネルギーの導入は重要ですが、それに偏りすぎることなく、原子力や火力発電とのバランスをとることが現実的な選択だと感じます。エネルギーは国民生活と産業の基盤であり、安定供給とコストの両立が最も重要です。
EUやドイツのエネルギー政策の失敗から学ぶべきことは多くあります。環境問題への対応は重要ですが、現実的で安定した政策がなければ、国民の生活や経済に悪影響を与えるだけです。理想を掲げるだけでなく、その実現に向けた現実的な戦略が必要だということを、改めて強く実感しました。
執筆:編集部A