2024年、日銀は植田総裁体制になり、ついに政策金利を0.25%まで引きあげ、利上げに踏み切った。「金利のある世界」に久しぶりに戻ってきたとはいえ、いまだ慎重な姿勢を見せている。なぜなのか。元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史氏は「日銀は利上げをとにかく遅らせたい。なぜなら、今すぐにでも1ドル500円、それどころか円が紙切れになる日が近いからだ」というーー。みんかぶプレミアム特集「スーパー投資家の教え」第2回。
ーー10月31日の金融政策決定会合で、植田総裁が「時間的余裕はある」という表現を使わないことを明言しました。これを追加利上げを示唆するメッセージと受け取る人も多いようですが、どのようにお考えですか? (藤巻健史、以下同) 日銀はもともと、次の利上げを最後の1回と考えているのだと思います。ただし、その実行のタイミングを遅らせたい意向があるように思われます。これまでも、さまざまな理由を挙げて先延ばししてきたのが現状です。 中央銀行の本来の利益とは、保有債券から得られる利息と支払い利息との差額です。通貨発行益といいます。この本来の利益(通貨発行益)が次回の利上げでマイナスになり、さらにもう一回行えば大幅なマイナスになります。日銀の信用失墜につながりかねない事態となってしまうからです。
ーー1ドル500円台になる日も近いということでしょうか? そうですね。1ドル500円台というのは一つの過程に過ぎず、極端な話、円が紙くずのような価値になってしまう可能性を指しています。例えば、1ドルが1兆円になるかもしれません。円の実質的な価値は紙幣そのものの物理的な価値だけになってしまいます。つまり、円では何も購入できなくなるということです。 なぜそのような状況に陥る可能性があるのかと言えば、現在の日本の財政状況が異常とも言える状況にあるからです。歴史的にも例を見ない規模の量的緩和策が続いています。本来であれば、短期金利を引き上げ、量的緩和を段階的に縮小していくべき時期に入っているはずです。しかし、それが実行できないのは、日銀が存立の危機を恐れているためではないかと思われます。
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【ツイッター速報さんの投稿】
引用元 https://news.yahoo.co.jp/articles/5af358e4b1179ca071b7e72810732078cf03e52c
日本銀行が長らく続けてきた金融緩和策の一端を見直し、政策金利を0.25%まで引き上げた2024年は、日本の経済政策にとって重要な転換点と言える年になりました。この利上げの背景には、国内外の経済情勢や物価動向の変化が大きく影響しているように見えます。しかし、慎重さを保ちながら進められる政策運営の裏には、日本が抱える財政問題という根深い課題が存在しているように思えます。
今回の政策金利引き上げについては、多くの専門家が歓迎の声を上げる一方で、さらなる利上げに向けた日銀の姿勢には慎重さが見受けられます。その理由は、単なる経済情勢の読み違いというよりも、日本銀行自身が抱える内的な制約が影響しているように感じられます。
まず注目すべきは、日銀が利上げを進めることによって被る財務上のリスクです。日本銀行はこれまで大量の国債を保有し、それによる収益を基盤としてきました。しかし、金利が上昇すれば、保有債券から得られる利息と、日銀が負担する支払い利息の差額が縮小し、場合によってはマイナスに転じる可能性があります。これは中央銀行としての信用を損なうリスクをはらんでおり、日銀が慎重な態度を崩せない要因の一つと言えます。
また、藤巻健史氏の指摘するように、日本の財政状況は極めて不安定であり、これが円安のさらなる進行を招く可能性が高まっています。円が極端に価値を失う「ハイパーインフレーション」のリスクは現時点では現実味が薄いように見えますが、決して無視できないシナリオとして認識すべきです。財政赤字が膨らむ中で、量的緩和策を維持し続けることは、長期的には通貨の信認を損ねかねません。
それでは、なぜ日銀はこれほどまでに利上げに慎重なのでしょうか。一つの答えとして考えられるのは、日本経済全体が長期間にわたる低金利環境に適応しすぎていることです。利上げが進むと、国債の利払い負担が急増し、政府の財政運営がさらに困難になる恐れがあります。また、企業や個人が抱える借入コストの増加も懸念されます。これらの理由から、日銀は利上げを「最後の一回」にするつもりで慎重に時期を計っているのではないでしょうか。
さらに、藤巻氏が指摘する「1ドル500円」という極端な円安シナリオについては、想像を超える事態ですが、これは日本経済の持続可能性を示す警鐘とも捉えられます。日本の経常収支は黒字を維持しているものの、貿易赤字や財政赤字が同時に拡大する中で、円の価値が国際的に評価されなくなるリスクを無視するわけにはいきません。
日銀が金融政策を転換する際に直面するこうした課題は、日本経済全体の構造的な問題を浮き彫りにしています。財政健全化への道筋を示しつつ、通貨と国民経済の信認を守るためには、金融政策だけでなく、政府の大胆な経済改革が求められるでしょう。
2024年は、「金利のある世界」への復帰が話題となりましたが、私たちはこれを単なる政策の一環と捉えるのではなく、長期的な経済運営の課題として考えなければなりません。これからの日銀の決断と政府の対応に、引き続き注目していきたいと思います。
執筆:編集部A