2024年は死刑の執行がゼロになることが27日、確定した。刑事収容施設法は土日や12月29日~1月3日に死刑を執行しないと定めているため。23年も死刑は執行されておらず、未執行の期間は2年5カ月に達した。近年では異例の長さで、死刑制度の転機となるかが注目される。
刑事訴訟法は、死刑執行は判決確定から6カ月以内に法相が命令しなければならないと定めるが、実際には法相の判断に委ねられている。
続きを読む死刑執行は、死刑囚への再審無罪判決が4事件続いた直後の1989年11月を最後に約3年4カ月にわたって「中断」した。93年に再開された後は、ほぼ毎年執行されていて、ゼロだった年は11年、20年、23年しかない。
直近の死刑執行は22年7月26日。当時の古川禎久法相が、東京・秋葉原の無差別殺傷事件の加藤智大元死刑囚(当時39歳)の刑執行を命じた。
しかし、その後に法相に就任した葉梨康弘氏が死刑を巡る失言で22年11月に更迭され、その余波もあって、後任の斎藤健、小泉龍司、牧原秀樹の各氏も執行を命じなかった。現在の鈴木馨祐法相は24年11月に就任したばかり。
未執行が続いている理由の一つとして考えられるのが、66年6月に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人が殺害された事件で、一度は死刑とされながら再審無罪が確定した袴田巌さん(88)の存在だ。23年3月に再審開始が確定し、当時から無罪の言い渡しが確実視されていた。
死刑囚の再審無罪は戦後5事件目。死刑制度は国民からの支持が存置の理由となっているが、生命を絶つ刑であるために間違いは許されない。死刑が確定した事件に、冤罪(えんざい)が含まれていた衝撃は大きく、法務省側が執行に向けた環境が整っていないと判断した可能性がある。
死刑制度を巡っては、死刑に反対する日本弁護士連合会が呼び掛け、検察・警察の元トップや国会議員らをメンバーとした有識者懇話会が存廃や改革・改善に関する検討をするよう国に求める報告書を11月にまとめた。
[全文は引用元へ…]
【毎日新聞さんの投稿】
引用元 https://mainichi.jp/articles/20241227/k00/00m/040/363000c
2024年も死刑執行がゼロとなったことについて、私は複雑な思いを抱いています。死刑制度は長年にわたり、日本の刑罰制度の根幹を成してきましたが、近年はその運用をめぐる議論が再燃しています。特に冤罪の可能性や人権問題に焦点を当てた反対意見が増える一方で、厳罰化を求める声も依然として根強く、社会の中で意見が二分している状況です。
まず、今回の死刑執行ゼロの背景には、袴田巌さんの再審無罪確定が大きく影響していると思います。この事件は、日本の司法制度に対する不信感を広く植え付けました。袴田さんは事件発生から半世紀以上も冤罪を訴え続けており、その間に精神的にも肉体的にも大きな苦痛を強いられたことを考えると、司法の誤りが人の人生にどれほど深刻な影響を及ぼすのかを改めて痛感させられます。
死刑制度に対する懸念が強まる一方で、凶悪犯罪が絶えない現状を考えると、厳罰化を求める意見にも理解できます。秋葉原無差別殺傷事件や相模原障害者施設殺傷事件など、社会を震撼させた事件の犯人に対しては、多くの人が極刑を望むのも無理はありません。被害者や遺族の気持ちを考えると、罪を償わせるための死刑は必要不可欠だと感じる部分もあります。
しかし、こうした凶悪犯への死刑執行が進まない理由としては、冤罪への懸念だけでなく、執行を命じる法相の責任の重さも関係しているのではないでしょうか。死刑執行の決定は、法相に大きな精神的負担を与えると言われています。特に近年は、法務大臣の失言や更迭が続いたことで、死刑執行に慎重な姿勢を示す傾向が強まっているように感じます。
私は、死刑制度の是非を議論する際に、冤罪の防止と厳罰化のバランスを取る必要があると考えています。確かに、再審によって無罪が確定するケースは慎重に対応しなければなりません。しかし、それと同時に、明確な証拠や自供が揃っている凶悪事件については、迅速に刑を執行することで法の公平性を示すべきです。
また、現在約50人が再審請求中であることを考えると、日本の司法制度はまだまだ改善の余地があるように思います。警察や検察、裁判所が連携し、証拠を徹底的に精査する体制を強化することが不可欠です。特に自白偏重の取り調べ方法や長期拘留による精神的圧迫が問題視されている点については、早急に見直しが求められます。
その一方で、再審無罪の事例があるからといって、死刑制度そのものを廃止するべきではないと私は考えます。社会を守るためには厳格な刑罰が必要ですし、被害者や遺族の心情を考えれば、犯人への厳罰は重要な意味を持ちます。犯罪抑止効果を期待する意味でも、死刑制度は一定の役割を果たしているはずです。
ただし、死刑を執行する以上、誤判を防ぐための仕組みはより一層強化されるべきです。DNA鑑定や防犯カメラの映像解析など、最新の技術を活用することで証拠の精度を高め、冤罪を限りなくゼロに近づける努力が必要だと感じます。また、再審請求が増加している現状を踏まえ、再審手続きそのものの透明性や迅速化を図ることも大切です。
死刑制度をめぐる国民の意識も、今後の議論に大きな影響を与えるでしょう。世論調査では多くの国民が死刑存続を支持しているという結果が出ていますが、これは安全保障や犯罪抑止の観点からの支持が強いことを示していると思います。しかし、こうした支持が維持されるためには、司法制度への信頼を取り戻すことが不可欠です。
私は、死刑制度があるからこそ社会の秩序が保たれている面もあると考えますが、その制度を維持するためには公正さや透明性を確保する努力が求められると強く感じます。また、法務大臣には責任を恐れずに適切な判断を下す姿勢が求められるでしょう。
今後も死刑制度についてはさまざまな議論が続くと思いますが、私は司法制度の信頼回復と厳罰化のバランスを見極めながら、より良い制度へと改善していくことが重要だと考えています。
執筆:編集部B