政府は日本で起業をめざす外国人向け「起業ビザ」の対象を2025年1月から全国に広げる。起業を条件に2年間まで滞在に必要な資格要件の達成を猶予する。ディープテック(先端技術)などの分野で有望企業の創出を狙い、地方活性化にもつなげる。
法務省と経済産業省が関連する告示を改正し25年1月1日に施行する。
起業をめざす外国人が日本に入国するには①事業所の確保②2人以上の常勤職員または500万円以上の出資…
[全文は引用元へ…]
【日本経済新聞さんの投稿】
引用元 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA259UE0V21C24A2000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1735203795
政府が2025年1月から外国人向け「起業ビザ」の対象を全国に拡大するとの発表には、疑問を感じざるを得ません。一見すると革新的な政策のように見えますが、現実にはさまざまな問題が懸念されます。特に、この政策が本当に日本の地方活性化や経済成長に寄与するのかについては、かなりの疑問があります。
まず、「地方活性化」という名目が掲げられていますが、実際には地方での起業が成功する可能性は低いのではないでしょうか。地方のインフラは都市部ほど整備されておらず、外国人起業家が事業を展開するには多くの障壁が存在します。交通アクセスや物流、ネットワークの問題に加え、外国人にとって言語や文化の壁は相当に高いものです。これらを乗り越えるための具体的なサポート体制が用意されているのか、非常に疑問です。
また、ビザ発給の条件も厳しい印象を受けます。「事業所の確保」や「2人以上の常勤職員、または500万円以上の出資」といった条件は、すでに資金力のある起業家しか対象にしていないように見えます。これでは、本当に新しいアイデアや技術を持つ起業家を呼び込むことは難しいでしょう。特に、資金面での制約が強いディープテック分野のスタートアップにとっては、初期段階でこれらの条件をクリアするのは至難の業です。
さらに、「2年間まで資格要件の達成を猶予する」という仕組みも中途半端に感じます。わずか2年間で事業を軌道に乗せることができる起業家がどれだけいるでしょうか。日本のビジネス環境に不慣れな外国人が、たった2年で成果を求められるのは過酷な条件と言えます。事業の成長には時間がかかることを考えれば、この期限設定は短すぎるのではないでしょうか。
また、この政策が外国人起業家を「地方に押し付ける」形になりかねない点も気になります。地方活性化の目的を達成したいのであれば、まずは日本人起業家が地方で活動できる環境を整えるべきではないでしょうか。外国人に期待するのは良いですが、その前に国内の課題に目を向けるべきです。地方自治体や政府が十分な支援策を提供していない中で、外国人起業家に成果を求めるのは酷な話です。
さらに懸念されるのが、治安の問題や社会的な摩擦です。外国人起業家が増えることで、地域社会との軋轢が生じる可能性があります。言語や文化の違いからくる誤解がトラブルを招き、地元住民との関係が悪化するケースも考えられます。こうした懸念に対する具体的な対応策が示されていない点も、この政策の弱点と言えます。
また、日本の行政手続きの複雑さや時間のかかる制度も大きなハードルです。外国人起業家が日本でスムーズに事業を展開するには、まずこの煩雑な仕組みを改革する必要があるのではないでしょうか。申請手続きが長引けば、せっかくのビジネスチャンスを失いかねません。
このように見ていくと、今回の起業ビザの拡大が「やらないよりマシ」といった程度の施策に過ぎないように思えます。地方活性化やディープテック分野の発展といった目的は立派ですが、それを実現するための具体的な道筋が欠けているのではないでしょうか。外国人起業家に多くを期待するのは結構ですが、その前に彼らが成功できる土壌を整えることが重要です。
こうした現実的な課題を放置したまま、表面的な取り組みだけで成果を期待するのは無理があります。政府がこの政策を本気で成功させたいのであれば、単なるビザ発給の拡大に留まらず、包括的な支援策を講じる必要があります。それこそが、外国人起業家だけでなく日本全体にとっても有益な方向ではないでしょうか。
執筆:編集部A