政府は、感染症法上の位置付けをしていなかった普通の風邪を5類感染症に変更することを決定した。11月29日、福岡資麿厚生労働大臣が省令改正をした。来春施行される。
これに伴い、同じく5類の季節性インフルエンザや新型コロナ(COVID-19)などと同様、一般的な風邪も、届出、流行状況の監視(サーベイランス)や発表の対象になる。「特定感染症予防指針」にも位置付けられたことで、風邪を予防するワクチン開発も可能となる。
8月中旬まで行われたパブリック・コメントでは異例の3万件超が寄せられた。反対意見が大半だったとみられる。
厚労省はこの決定について報道発表をしていないが、官報に掲載された。【訂正あり】
この方針は7月、前任の武見敬三厚労相の時に示された。
新たに5類に追加される「急性呼吸器感染症」は「『かぜ』の原因となるコロナウイルスも含まれる」と明言(拙稿および会見録)。また、「風邪のワクチン開発」も検討対象になる、と述べていた(会見録)。ただ、これまでの公式資料には「風邪」という表現は一切用いられていなかった。【修正・追記あり】
国立感染症研究所は、ヒトに日常的に感染する4種類の「風邪のコロナウイルス」があり「我々はこれらのウイルスに生涯に渡って何度も感染するが、軽い症状しか引き起こさないため、問題になることはない」と解説している。
パブリックコメントでは「急性呼吸器感染症は非常に幅広い病原体・症状を含んでおり、その全てが法による監視が必要な疾患であるとは思えない」「風邪により検体の採取が行われるのは反対」「サーベイランスにかかる費用や、医療機関の負担が増えることから反対」などの意見が寄せられていた。
大臣決定と同じ日に公表された資料によれば3万1541件あり、紹介された意見はごく一部だが、全て反対意見だった(意見全体のうち賛否割合は不明)。
この資料には、厚労省のコメントとして「ご指摘の『風邪(かぜ)』が含まれますが、国内で発生している急性呼吸器感染症の割合を把握するためには必要な仕組みと考えています」と、5類に追加されるものに「風邪」が含まれることが明記された。
福岡厚労相は省令改正の決定を行った11月29日の定例記者会見で、特段の発表も言及もしていなかった。現時点で報道発表しておらず(厚労省HP)、官報でのみ確認できる(号外277号)。施行日は来年4月7日と定められた。
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【稲垣昭義さんの投稿】
引用元 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/961b1d50850ae1e3948029cedbb6b8ee3ee00db6
政府が風邪を5類感染症に変更することを決定したというニュースを聞いて、正直なところ驚きました。この決定は、今後の医療体制や社会全体にどのような影響を与えるのか、さまざまな点で議論を呼ぶものだと感じます。特に、一般的に軽症とされる風邪が感染症法上の位置付けを与えられることで、医療機関や国民にとっての負担がどの程度増加するのかが気になります。
まず、風邪が5類感染症に変更されることで、新型コロナや季節性インフルエンザと同様に届出や流行状況の監視対象となるのは、医療現場にとって大きな負担をもたらす可能性があります。これまで風邪は特別な位置付けを持たず、医師の診断で治療が行われてきました。しかし、今回の変更により、医師が風邪の症例を指定医療機関として報告しなければならないとなると、診療以外の業務が増えることになります。
また、風邪を5類感染症に位置付けることで、サーベイランスが強化されるのは理解できますが、それが医療機関や行政機関の負担増加につながるのは避けられないでしょう。パブリックコメントで多くの反対意見が寄せられたことも頷けます。特に、「風邪のような軽症疾患をわざわざ報告対象にする必要があるのか」という声はもっともだと感じます。
さらに、風邪が「特定感染症予防指針」に位置付けられたことで、風邪のワクチン開発が可能になるという話も議論を呼ぶポイントです。確かに、風邪の原因となるウイルスは多岐にわたるため、予防のための研究が進むことは良いことかもしれません。しかし、これが実際に有効性を発揮するのか、また国民にどの程度の利益をもたらすのかは不透明です。ワクチン開発には膨大な費用がかかるため、そのコストがどのように負担されるのかも含めて慎重に議論する必要があります。
加えて、風邪を5類感染症に格上げする理由として「未知の感染症の早期把握」が挙げられていますが、この目的はすでに別の仕組みで対応可能ではないかと疑問を感じます。今回の変更が本当に未知の感染症対策に資するのか、それとも不要な監視体制を強化するだけなのか、明確な説明が不足しているように思います。
一方で、今回の決定が国会で議論されることなく省令改正のみで実施された点についても問題があると感じます。国民にとって重要な政策変更が官報に掲載されるだけで公に議論されないのは、民主主義の観点から適切ではありません。特に、新型コロナの経験を踏まえて国民の関心が高まっている中、政府はより透明性を持って説明を行うべきではないでしょうか。
反対意見が多数を占めたパブリックコメントにも関わらず、強行的に決定が進められた背景には、何らかの事情があるのかもしれませんが、それが国民にとって納得のいく形で示されていないことが、さらなる不信感を招いているように感じます。
現行法で5類感染症の範囲を大臣決定のみで変更できる仕組み自体が問題なのではないでしょうか。このような重要な変更は、国会での議論を経るべきだと思います。少なくとも国会議員や国民に対して十分な説明を行い、合意形成を図るべきではないかと考えます。
風邪の5類感染症への変更が国民にとって本当に必要な施策なのか、そしてそれが医療機関や行政の負担に見合うものなのか、今後の施行を通じて慎重に検証する必要があると思います。こうした政策が社会全体にどのような影響をもたらすのか、引き続き注目していきたいです。
執筆:編集部A